連載
  スギダラな一生/第64笑 「スギというソウル」
文/ 若杉浩一
  2013年総括  
 
 
  日本全国スギダラケ倶楽部も、今年は十年目を迎えた。今思えば、今の様な形になり今の自分をこんな方向にしてしまうなんて思いもしなかった。
   
  南雲さんが、宮崎で杉に出会った。同じ時期に、僕はマスプロダクトに疑問を持ちながら間伐材のプロジェクトをやっていた。
   
  同じ展覧会で同じ事に気づいた。
故郷を捨て、山を捨て、デザインという仕事をして、真ん中にいる自分が何も繋がっていないと言う事。そして、自分達のデザインの小ささに憤りを感じた。
   
  そして、何も解らず、何の根拠もなく、ノリと勢いで、笹塚の飲み屋で結成した。
全て手探り、しかも会の名前が「日本全国スギダラケ倶楽部」と怪しい。
どこに行っても、怪しがられるし、信頼は得られない。
やっているデザインを見せて、「あ〜〜あ、デザイナーね?」ってようやく、素性を理解される。
   
  しかし、あれから、僕達は、今や何ものかさえ、自分が解らなくなって来た。
デザインはやっているのだが、目的ではない。
地域に、企業に行っては、エネルギーを注入する。
大騒ぎをする、仕掛けを作る、シナリオを書く。
キャッチコピーを考える、エンターテイメントする。
語る、そして飲む、飲む、飲む。
デザイン以外が大変なのだ。ヘトヘトになる。
そして、殆ど休日が無くなる。
   
  最初は、ノリと勢いでやり切れたが、そんな体力も少なくなって来た。
大抵、酒が残っている。だいだい、疲労困憊の中で思考する、デザインする。
従って、自然と、勢いだけ、大づかみになって来る。
そして計算が出来なくなる。嗅覚だけが働くようになるのだ。
そして、人に潜んでいる、エネルギーの匂いを感じるようになる。
自分からも匂いが出ているのか?最近、同じ匂いの仲間がやたら増えた。
   
  この匂いの元は、人体の「スギというソウル」から出ている。
そしてこの症候群を、変態という。
   
  感染に年齢、性差、業種は関係なく、症状として、見ては行けないものを見、触らなくて良いものを触り、開けなくていいフタを開け、蔑まれようが、認められまいが、嬉しそうに自らを捧げる。そして、暑苦しい。
滅多にいない変わり者である。
珍種なので、数は少ないが、この病気は伝染する。
元々、大体の人にはこの病原菌は潜んでいるが、殆ど発症せず生きていく場合が多い。だが一度発症すると、もはや治らない。
一生、病気を隠して生きるか、開き直るかしかない。
感染者は、殆ど自覚症状がなく、なんとなく他から、距離を置かれる。
   
  この病気は、人類が進化する上で取得した、病気であり、行動に意味や経済的な合理性は無く、いつも遠くを見て、未来だと言い放つ。
   
  そして意識に関係なく、群がる傾向があり、騒ぎを起こす。
この集団を「スギダラ」という。
   
  貴方も、その病気ではありませんか?
   
  今年になって、気づかされた。
   
  2013年総括。
   
   
   
   
   
   
  ●<わかすぎ・こういち> インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 所属。
2012年7月より、内田洋行の関連デザイン会社であるパワープレイス株式会社 シニアデザインマネージャー。
企業の枠やジャンルの枠にこだわらない活動を行う。
日本全国スギダラケ倶楽部 本部デザイン部長
月刊杉web単行本『スギダラ家奮闘記』:http://www.m-sugi.com/books/books_waka.htm
月刊杉web単行本『スギダラな一生』:http://www.m-sugi.com/books/books_waka2.htm
月刊杉web単行本『スギダラな一生 2』:http://www.m-sugi.com/books/books_waka3.htm
   
 
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