連載
  スギダラな一生/第56笑 「スギ騒動」
文/ 若杉浩一
   
 
 
  すみません、原稿遅れました。アップ、アップで原稿がアップできませんでした、ウカウカしてて、アップいう間に時間が過ぎました。
   
  すすす、すみません。
   
  一月遅れですが、ティンバライズ展に関してです。
   
  ある日、多分休日だったと思う、酔っぱらった千代田から電話が掛かってきた。しかも夜、「こんアホは、友達は居らんとか。」と思いながら話しを聞くと、腰原さんと飲んでいるという、ティンバライズ展を福岡でやりたいとのこと。腰原さんからは、何となく聞いていたので、「何か協力せんとな〜〜」と思っていた。腰原さんが電話に出て「今、千代田さんと、盛り上がって若杉さんにセミナーの講師をしてもらおうということになりました。是非日程確保お願いします。」ということになった。ま〜た千代田の「僕らがやります」の「ら」になってしまった。まあ何はともあれ、同じ杉というソウルの間柄、断る理由もないので二つ返事で引き受けた。
そして、スギダラとティンバライズの協同展示ということになったのだ。
   
  しばらくして、このことを反芻していると、ふと思い立った。これは、ただの協力じゃ面白くない、ティンバラズとスギダラの合体で今までに見えなかったことが見えることになる。
「そうだ、こりゃ杉のゲリラ?いや何だろう?米騒動、百姓一揆?」
「杉騒動だ!!」
「杉で、同時多発的に騒動を起こせば、いくら何でも目に余る、皆が知るはめになる。これだ、これだな!!」
と思うや否や、千代田に電話だ。
「おい!!千代田!!今回のお前の(ら)事件だが、腰原さんを手伝うなんて浅はかな考えをするんじゃね〜ぞ。こりゃな、ティンバライズとスギダラが起こすスギ騒動だ、騒動を起こすんだ。そんくらい、せんと意味がない。わかったか千代田!!」
「若杉さん〜〜、騒動ですか?」「騒動だ!!」
「また、えらいこと考えましたね!!」
「大丈夫だ、千代田!!お前に最も向いた行為だ。厚かましくやれよ!!」
「若杉さん、人を何だと思ってるんすか?」
「大丈夫、地で行け!!」
それだけを言い放って、今回の会が執り行われた。
   
  会場を見て、実は正直、僕はびっくりしたのだ。
「なんて事をやりやがるんだ!!こりゃ、正しくスギ騒動だ!!やりやがった。」
そう思ったのである、ひどいもんだ。
ティンバライズの展示、そして九州の大学連合の木質化プロジェクト展、スギダラ、九州軍。その規模、内容、人にびっくらコケたのである。そして学生達の発表、先生達の面白い評価、パネルディスカッション。今までに違うジャンルの人たちがこんなに同じテーマで盛り上がり、助け合い、新しい発見をしたことがあっただろうか?そう思ったのだ。
   
  南雲さんと冗談で言っていたこと。
「若ちゃんさ〜〜、いつかさ〜、スギダラで東京ドームでさ、全国大会やりたいね」そのことを思い出した。
一寸小さいが、ここは福岡のドームじゃないか、それも同じ志で皆が集い、助け合い、想いを一つにしている。
なんだ、もうその思いは目と鼻の先じゃないか?
僕はセミナーの最後にこう言った。
「この会に参加し、違う技術、役割、そして場所を超えた人たちが集い、新しい発見と価値を共有しました。これはもう、何かが起こり始めている。来年はいよいよ、東京ドーム??そう思います。」
「お〜〜!!」歓声とどよめきが起こった。
   
  懇親会がまた凄かった。何人いるんだ?少なくとも50人いや、いやもっと居ただろう。お互いに感動し、お互いに讃え合った。そしてまた、大切な仲間が増えた。ここで、この喜びを出すのがコッ恥ずかしい僕は、皆と別れた後の、深夜2時に千代田と二人きりで飲んだ。
「千代田。ご苦労!!よくやったな!!大変だったろう。しかし、見事だった。感動した!!ありがとう。」
「何ば言よっとですか〜〜 若杉さんが騒動を起こせと言うけんが、各大学の先生と生徒とばで、巻き込みました。先生達も大変やったろうと思います。腰原さんも凄かった。土壇場で資金調達しますもんね。みんな役割があって、助けてくれました。」
「わいた〜〜、あん千代田がこげん、よか事ばいうばいね〜。野犬も成長するばいね〜」
「なんば、言よっとですか〜。福岡来てですよ、仕事も頑張りました。ばってんいつも一人やった。東京のときは、若杉さんや仲間がいて、それが当たり前やった。ばってん、ここでは一人ですよ。唯一スギダラのメンバーが同じ志で繋がる。だけんですよ、こりゃ〜やらんといかん、何が何でもと思うたとです。」
「さすが、千代田プロやね〜」「なんば、言うとですか!!」
こんなくだらない会話を重ね、うまい酒を飲んだ。
   
  先日天草高浜ワークショップの発表会が、東京の内田洋行で行なわれた。天草の面々、そして、九州大学の皆、東京の高浜会の皆さん、サムスン、スギダラのメンバー等々様々なメンバーが一同に会し、これまでの軌跡と夫々の発表が行われた。
僕は、最初は何故に、わざわざ、お金を使って、東京で発表するのかの意味を理解していなかった。そこへ、藤原先生がこんな事を言った。
「天草と繋がり、みなさんとワークショップを繰り返し、昨年末高浜で報告会を開きました。そして今回、東京で報告会を開けることになりました。僕は、まちづくりの中で大切なことは、何かを起こして、活動することと同時に、報告するということがとても大切で重要だと思っています。報告することによって真実が見えてくる、磨かれてくる。それは、アウトプットもそうですが、人もです。人に伝えること、そしてその場を体験し自分たちのことに気づいて行く。だからできるだけ、沢山、そして出来るだけ大きい機会に接して行くことが始まりのような気がするんです。」
   
  衝撃を受けた。僕たちは、なにげに、作ることがゴールで、誰かが、メディアが、取り上げてくれればいいな〜〜とぐらいにしか思っていなかったのではないか。
作ることと同時に大切なこと、「報告」という伝えることを軽視していたように思うのである。
作ることと、同時に大切な広がりや繋がり、そしてその場によって人も、コトも磨かれるということを忘れてはいなかったか?
   
  僕たちは生産すること、作ること、商品にすることで、何かが起こると過信してはいなかったか?モノを通じて伝えなければならない物語を伝えるのはやはり人であり、人の背後にある力が言霊となり、モノやコトを磨き上げるのである。結局モノとモノガタリ力が必要なのである。
こんな当たり前を実感するのに随分時間がかかるものだ。
   
  日南の健ちゃん達がやっていたこと、JR九州の津高さん、荒川さんがやっていたこと、日向の海野さん、和田さんがやっていたこと、宮崎の川上さん、石田さん達がやっていたこと、吉野の石橋君、中井さんがやっていること、言い出したらきりがない。その根底に存在するものは、価値を磨き、人を磨き、美しいモノガタリを伝えていく、たゆまない活動「スギ騒動」だったのである。
   
  いいね〜〜 その騒動な中に身を委ねられることがね。
さっぱりどこに行くのか解りはしない。
計画なんて立ちようがない、誰が演じるのか解りやしない。
その場が来て、役割を果たすだけが精一杯。
だって、それは、騒動だから。
何が起こるか想像できない。
だが、創造のまっただ中にいる心地よさ良さだけが確信だ。
   
  さあ、同時多発的に騒動だ!!
   
  ティンバライズチーム、腰原さん、そして千代田に感謝の気持ちを込めて。
   
   
   
   
   
   
  ●<わかすぎ・こういち> インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンターに所属するが、 企業の枠やジャンルの枠にこだわらない
活動を行う。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部デザイン部長
『スギダラ家奮闘記』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_waka.htm
『スギダラな一生』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_waka2.htm
   
 
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