短期連載
  住宅のアプローチ・構えの風景との関わり 第8回(最終回)
文/写真 大坪和朗
  千葉県中山間農家のアプローチ『じょうぼ』の分析と考察
 
 
  つい先日、スギダラの見学会に参加させて頂いた際、この記事を読んでくれていると教えてくれた方がいました。
  「有り難うございます!!(固く握手)」
  その時は、場の流れも有りそう出来ませんでした。
  この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。
   
  共感してくれた人がいればいた分だけ、書いて良かったと思えます。
   
  さて、長々とお伝えしてきましたが、感覚として言いたかったことは・・・
   
   
   
  ● 難しい話は不要!
   
  もともと私は、論理的思考をあまりしない人間であります。勿論今でもそうです。
  お薦めはできませんが・・・笑。理論的思考から導き出される解よりも、直感的に描き上げる手業のような感覚を信じ、それを尊重することが多いように思います。“直感的に良いと思った何か”に感心があるからでしょう。
   
  そして、全てを説明できる必要は無いのではないか、上手く説明出来ないことを、説明出来ないままにしておくことも、また躍動的で味わい深いことであると、思うようになったのです。そこにこそ深み・広がりがあるのではないかと。
   
  A「おい、あれいいよな!」
  B「お、いいね〜」
  A「しかし、どうしてそう思うのかな〜」
  B「どうかな〜、ま、そんなこといいじゃねえか、間違いなくいいんだからよ!」
  A「そうだよな!」
  B「おう、そうよ!」
  A,B「わははは!」
   
  と、いうようなことなのではないかと。笑。
  この感覚的な躍動の中に、絶妙な知恵とセンスの蓄積と歴史があるのだろうと。
  考えるのです。
   
  学術的あるいは文化的評価はあまり関係ない、とも言えるのではないか。
  感じたままでいいのではないか。
  皆さんが感動したもの、そこに必ず価値がある。
   
   
   
  ● 目立たないところに、価値が眠っている
   
  スギダラ見学ツアーに参加してこういう経験をさせて頂きました。
   
  奈良県吉野町に見学に行った際、金峯山寺蔵王堂という建物を拝見し、ひどく感動したのです。
  こんなお寺が有ったのですか!!という驚きです。
  多種多様な文化が混じり合った、いいようもなく力強い建物だったのです。
  エネルギッシュで、大胆且つ繊細、気品があり、人間的、ここなら逝ける・・・と、意味もなく呟いてしまう包容力。
  説明しなさいと言われれば、インドのような、中国のようなアジアの要素があり、間違いなく日本の建物。
  ・・・と言えるかどうかも良く分からない。笑。
  しか〜し、とにかく凄い建物だということは間違いない。
   
  多分こういう事なのではないかと感じました。
  歴史的建造物とは「その時代の様式が、分かりやすく特徴的に表されている建物」ということであって、多種多様な文化が混在した非常に人間的で親しみやすく感動的な建物が取り上げられるとは限らない、ということなのではないかと。
  しかしむしろ、そういうことのほうが、人々の共感を得られる可能性が有る。
   
  目立たなくたって、いい物はいい。
  凄くなくたって、いい物はいい。
  皆さん一人一人がどう感じるか、それだけで十分なのだと思います。
   
  誇りを持って、目立っていきましょう!
   
   
   
  ● 直感的感動!を教えて下さい
   
  論文を書くには、論文という形式に則らなくてはならなかったり、なにかしらの結論を導き出さなくてはならなかったりします。
  理論的思考をあまりしない私が “描いた”論文図絵は、はたして論文といえる物だったのだろうか、今でも疑問ではあります。
   
  風景との出会いの感動から始まり、1年程通った集落を題材にした論文の発表では、理論的に論述することよりも、簡単な話、風景の写真をスライドショーとして延々と皆さんに見せたいくらいでありました。
   
  「こ〜んな!!風景なんです、いいでしょう!
  もし興味を持って頂けたなら、後で論文読んでおいて下さいね〜」
  みたいな感じで進めても良いと、思ったものです。
   
  事物を解明する上での理論は必要なことだけれど、冷静に客観的に解明したことによって、感動の温度が下がってしまうのなら、それはモッタイナイことだと思いました。
  「理論や結果」よりも、「感動の温度」が大事かもしれない。
  10数年前の自戒を込めて。
   
  結論の出ない話大好き!(←アホである)
  だから面白いし、延々と取り組める楽しさがある。(悩ましさもある。笑)
   
  感動を、感動したまま伝える手段や場が有れば、その方が面白いし、伝わるのではないだろうか、と思うのです。
   
  月刊杉は、そんな場だと感じています。
  皆さんの、直感的な感動を是非、教えて下さい。
   
   
  有り難うございました!
   
   
 
  阿波の那賀川
   
   
   
   
 

●<おおつぼ・かずろう> 建築家
風景を思うことがライフワークであり仕事でもある。
建築「絶景」事務所とでも言ってみると楽しい。
大坪和朗建築設計事務所HP:http://www.otsubo-archi.com/
Blog:http://otsubo-archi.cocolog-nifty.com/

   
 
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