連載
  スギと文学/その42 『測候所』 宮沢賢治
文/ 石田紀佳
  「春と修羅」第二集より
 
  「春と修羅」の第二集にも杉が出ていましたので、また宮沢賢治さんの心象スケッチを読んでいきます。  
   
   
   
  測候所
   
 
シャーマン山の右肩が
にはかに雪で被はれました
うしろの方の高原も
おかしな雲がいっぱいで
なんだか非常に荒れて居ります
  ……凶作がたうたう来たな……
杉の木がみんな茶色にかはってしまひ
わたりの鳥はもう幾むれも落ちました
  ……炭酸表をもってこい……

いま雷が第六圏で鳴って居ります
公園はいま
町民たちでいっぱいです

   
   
   
  多分、雪が終わった春なのでしょう。その季節にシャーマン山(早池峰山かといわれている)に雪がふったのです。
新芽を吹いたはずの杉が冬枯れのようになり、鳥さえ死んでしまうのですから、稲は育つ見込みがないのでしょう。
「炭酸表」というのが何かわかりませんが、測候所にいって気象を予測する材料を宮沢賢治は調べたことと関係があるのでしょうか。
 
   
  第二集は第一集よりも、農民の厳しい状況が描かれているようです。それは賢治の境遇もかわり、彼自身も厳しい暮らしを選んでいったからかもしれません。  
   
   
   
   
  ●<いしだ・のりか> フリーランスキュレ−タ−
1965年京都生まれ、金沢にて小学2年時まで杉の校舎で杉の机と椅子に触れる。
「人と自然とものづくり」をキーワードに「手仕事」を執筆や展覧会企画などで紹介。
近著:「藍から青へ 自然の産物と手工芸」建築資料出版社
草虫暦:http://xusamusi.blog121.fc2.com/
『杉暦』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_nori.htm
『小さな杉暦』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_nori2.htm
ソトコト「plants and hands 草木と手仕事」は3/5日号が最終回。トリを飾るテーマは「杉」です。
   
 
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