特集 祝!obisugi design グッドデザイン・日本商工会議所会頭賞!
  obisugi design を通して感じたこと

文/写真 出水進也

 
グッドデザイン賞 商工会議所会頭賞受賞おめでとうございます。
ぼくも深く関わらせてもらったひとりとして心から嬉しく思っています。一報は出張先で若杉さんから受賞決定後すぐに電話をもらい、場にそぐわぬ大声で喜びました。
この賞はこれまでの決して簡単な道ではなかったこのプロジェクトに、大きな褒美を頂いたような気がします。審査委員の評価を読むとこのプロジェクトの意義をよく理解して頂いており、さらに感激をした次第です。これまで大きな力が社会を動かしてしまう流れのなかで、このような小さな団体がこのような全国的な賞を取るのには意義があると思うし、現にそういう小さくても意義ある活動は沢山出てきています。これから世の中はシフトチェンジする気がしています。
   
  …かといって、もちろんこれがゴールではではありませんし、そもそもobisugi designの目的は売れることではなく(もちろん売れてほしいけど)、その先の、豊かな社会になるべく、日南の未来を、つまりは日本の未来を見ています。
   
  その「豊かな社会」ってどんな社会でしょう。
  おそらく個々で思い描くものは異なるでしょうが、ぼくが想像する豊かな社会は、生産と消費が今よりもっとコンパクトに同調して回っているすがたを思い描いてます。
  単純に考えると、究極は自給自足なんだろうと思います。
  ですから大型スーパーなどはそのすがたを一番に破壊しているものに感じます。大量生産して大量消費して、コストも安くなり、消費者もそこに行けば何でも揃うので足を運ぶ。でもその付近に昔からあった小さな商店はやっていけなくなるでしょう。商品の金額を比べると到底かないません。
   
  obisugi designの商品は、皆さんにまず価格が高いと言われます。
  もちろん安いとは言えません。でも価格を決めていく過程のどこを見ても無駄はない…すなわち適正価格です。でも高いと言われるのは、世に安い商品がたくさん存在するから。某北欧系家具メーカーを見ても、彼らは世界中のマーケットを見据えて生産するわけですから超大量生産し、単価を極限まで落とすことができます。それと比べて安く出来るはずがありません。価格だけを考えて天秤に掛けないでほしいんです。
   
  私たち消費者は、自分の選択が社会に対して影響を及ぼしていることを自覚しないといけないと思います。マスの一部であることを認識しないといけない。少しでも安い商品を買いたいのは当然です。でも自分なりの価値観を持たなければいけません。
   
  デザインの話で言うと、ヨーロッパ諸国はデザイン先進国だと思いますが、お菓子のパッケージでも薬でも、家具でもそう、良いものが多いというより悪いものがほとんど無い印象です。それはたぶん消費者に見る目があるからだと思うし、そういう商品は消費者が選ばない、つまり売れないから存在しなくなります。
  以前テレビでイタリアに移籍したサッカー選手が言ってたのですが、イタリアのサポーターは日本と違って細かいプレーまで見る目があるので、下手なことは出来ない、常に緊張感ある状態で試合に臨んでいるそうです。すなわちサッカーを見ているだけのサポーターもチーム強化につながる要因になっているんです。
   
  つまり消費者の選択は社会に影響します。
  自分ひとりくらい、という考え、自分の選択がまったく社会に影響しないと思うのでは少し想像力が貧困すぎます。近年になって人口が爆発的に増加し、社会がどんどん大きなもの、個人の想像範囲をこえる存在になってしまって、どこか自分とは関係ないもののように社会を見てしまいがちだけど、本当はそんなことないはず。ぼくらが社会を良くするんです。
  ありとあらゆる商品があるなかで、自分はどの商品をえらび、どこで商品を買うか、それを選ぶことによって社会にどんな影響があるのか、自分の考えで選択しなければなりません。
   
  もちろん、消費者だけが悪いとは思いません。
  生産者も自己の利益ばかりではなく、社会の利益を考えて動かなければならないと思うし、メディアにだって問題はあると思います。
   
  ただ、ぼくがobisugi designに関わって感じたことは、はたしてぼくは消費者として社会にコミットできているのか、という思いでした。ぼくはまず、一消費者として豊かな社会のため出来ることを考えなければならないと思っています。
  そしてobisugi designの活動においても、生産する側として、豊かな社会に対する思いを込めたいと思っています。
   
   
   
   
  ●<でみず・しんや>ナグモデザイン事務所
香川県直島出身
東京造形大学卒業
   
 
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