連載
  吉野杉をハラオシしよう!〜“駆け出し”専務の修行日記〜第42回
文/写真  石橋 輝一
  鍛え系杉連載。さぁ、吉野中央3代目と一緒に勉強だ!
 
6月になりました。
梅雨入りを控えたこの時期、製材所では原木の製材で慌しくなります。
   
  秋頃に寒切りされた原木が葉枯らしを終え、山から出材され、原木市場に集まります。製材所は原木市場で冬から春にかけて仕入れを行い、原木をストックしておきます。
   
  季節が春から夏へと移り変わり、気候が暖かくなるにつれて、原木のままで置いておくと、傷みやすくなります。周辺部の白太の部分に、ヤケ(腐る一歩前の状態)、アオ(青色のカビ)が入るようになり、白太が腐って使えなくなる事もあります。特に梅雨を控えたこの時期が一番傷みやすいです。
   
  原木の状態で置かず、製材をして四角にしてあげると、傷みにくくなります。これは水分が出やすくなり、乾燥が進みやすくなる為だと思います。
   
  当社、吉野中央木材でも今、大急ぎで原木を製材しています。大きな半製品の状態に製材をして、乾燥させていきます。出荷する寸法よりも大きめの半製品として在庫しておいて、注文寸法に応じて再度製材を行うわけです。
   
  原木のままで置いておけば、どんな寸法にも対応できそうですが、乾燥は進まない上に傷みやすく、また原木は実際に割ってみないと中の状態が分からない為、原木のままで置いておいても、あまりメリットがありません。
  様々な寸法の半製品を大量にストックする事で、できるだけ様々な注文に対応する事を目指しています。
   
 
  これは桧の6m8寸角、240mm×240mmの柱用です。断面が大きい為、自然乾燥で半年以上置いてから、低温式の人工乾燥機に入れます。現在では納期が短く、乾燥材で用意する事が当たり前になっている為、将来を予測しながら、在庫を作る事が重要になっています。
   
   
  ちょっと変わった製品を製材しましたので、ご紹介しましょう。
   
 
  真っ黒な杉の丸太です。
   
  これはスギです。写真を見てお分かりになるように、赤味の色合いが黒いです。
いわゆる黒芯材と呼ばれる丸太です。赤味の色合いが黒いと、一般的には製品としての価値が下がる傾向にあります。
   
  赤黒い材は細胞内にゴミが詰まっているような感じで、鉛のように重く、なかなか乾かない事は多いです。しかし、脂精分が強く、水分や紫外線に対して、かなり強い材料だと思われます。
   
 
  板に製材しました。真っ黒です!
 
  赤黒い杉板を桟積みしました。写真右奥に見える真っ黒な材も杉ですが、これは1年以上の間、自然乾燥して杉の梁材で、日焼けとホコリで黒くなっています。製材したばかりの杉板ですが、黒さでは遜色がありません!
   
  木を知っている方は、杉の赤黒材を外壁の材料として使われる事が多いです。
   
  長期間この状態で乾かしておくと、驚くほど良い色合いになります。黒いのは黒いのですが、なんとも艶っぽい赤黒色になります。この杉板は僕の従兄弟の家の外壁に使ってもらいます。
   
  赤味の色合いがピンク色にきれいな木材の中に、赤黒色の木材を混ぜると変かもしれません。
しかし赤黒色ばかりで揃えると、なんとも良い味わいになります。
   
  杉は特に個体差が大きい為、性質のバラつきが多いです。
木の個性をできるだけ活かして、活躍できる場所を作っていく事が僕達製材所の使命だと思っています。
   
   
  つづく
   
   
   
   
  ●<いしばし・てるいち> 吉野杉・吉野桧の製造加工販売「吉野中央木材」3代目(いちおう専務)。杉歴3年。杉マスターを目指し奮闘中!
吉野中央木材ホームページ: http://www.homarewood.co.jp
ブログ「吉野木材修行日記」: http://blogs.yahoo.co.jp/teruhomarewoodもよろしく!ほぼ毎日更新中です。

『吉野杉のハラオシをしよう!』web単行本: http://www.m-sugi.com/books/books_ishibashi.htm
   
 
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