連載
 

東京の杉を考える/第40話 「東京にしがわ大学開校準備中」 

文/ 萩原 修
  あの9坪ハウスの住人がスギダラ東京支部長に。東京から発する杉ものがたり。
 

「シブヤ大学」をご存知だろうか?学校法人ではなくNPOの組織だ。今から約3年前の2006年に渋谷を舞台に街を学びの場にして、人と人をつなぎ新しいコミュニティをつくろうとはじまった。月1回土曜日に、街のあちらこちらで、様々なテーマでユニークな授業をしている。入学試験も授業料もいらない。誰でも参加できる。

このシブヤ大学の試みを、全国にも広げる動きがある。現在、京都と名古屋に開校していて、札幌や広島でも準備中だ。そして、立川を中心とする東京の多摩地域にも、2009年のはじめ頃からこの動きがあり、ぼくのところにもなぜか連絡があった。前からシブヤ大学の名前や概要はメディアを通じて、知っていたけど、直接会って話をして、こんなにおもしろい試みはないと思った。はじめて会った日に、ぜひ、関わりたいと言った。

学長候補と、初期メンバー10人ほどがはじめて顔をあわせたのは、2009年の8月6日。学長候補は、なんと26歳の女性。他のメンバーもお互いに顔見知りというわけでもなく、はじめて会う人もいた。それでも定期的に話をして、合宿もして、いろんなことが少しずつ決まってきている。今年2010年の秋に開校をめざし、現在いろいろと準備中だ。「東京ウェッサイ」というFMたちかわではじまったラジオ番組のコーナーで「東京にしがわ大学」のことを話をはじめている。

東京の西側の多摩地域は、26市あって、約400万人が住んでいるという。東京の23区は、800万人だから約半分。面積は23区の倍以上だから、人口密度は1/4。山も川もあり自然が多い地域。縄文時代にさかのぼる歴史もあるけど、戦後に地方から移住してきた人も多い。東京なのに東京らしくない田舎的な側面もある。そして、この地域を愛し、もっと魅力的で暮らしやすい街にしようと奮闘している人たちがたくさんいる。

ぼくは、東京の国分寺市で小さい頃から育ち、大学まで多摩地域だったのに、就職したのは、新宿。それから5年前までの21年間は、ずーと東京23区に通勤出稼ぎ生活。いいかげんにこの状態をやめたいと思い会社を辞めて、自宅の三鷹を拠点にして、実家の国分寺と国立にコミュニティスペースを開いて、少しずつだけど、西側で仕事や活動ができるようになってきている。スギダラトーキョーの活動もまさにその一環だ。

それでも、いまだに週の半分以上は、23区に打ち合せに通う生活だ。もっと多摩地域で仕事や活動ができたらいいのにと思っていた。そんな時に出会った「東京にしがわ大学」の話。東京の多摩地域を学びの場にして、ユニークな授業を通じて、いろんな人がつながる試み。これまで考えてきたことが、いろいろと実現できそう。スギダラトーキョーの活動とも、つながっていけそうだ。

「しぜん」がたくさんあって、「たべる」ことに真剣で、「しごと」も充実していて、「つくる」試みが好きで、「ふしぎ」なこともに興味があって、「こども」の未来を育んで、「いのち」を大切にする。そんな「にしがわ」であって欲しいと願う。

   
 
   
 

シブヤ大学
http://www.shibuya-univ.net/

東京にしがわ大学開校準備室
http://www.tokyo-nishigawa.net/

東京ウェッサイ
http://www.tokyowestside.jp/

   
   
   
   
  ●<はぎわら・しゅう>デザインディレクター。つくし文具店店主。
1961年東京生まれ。武蔵野美術大学卒業。
大日本印刷、リビングデザインセンターOZONEを経て、2004年独立。日用品、店、展覧会、書籍などの企画、プロデュースをてがける。著書に「9坪の家」「デザインスタンス」「コドモのどうぐばこ」などがある。
つくし文具店:http://www.tsu-ku-shi.net/
『東京の杉を考える』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_tokyo.htm
   
 
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