特集 サムスン視察団が見た宮崎!
  宮崎フィールドワーク・2日目
文/写真 竹本香織
 
さて、あんなに盛り上がった昨晩でしたが、2日目も朝から快晴です。しかも、堂々の真夏日です!2日目の様子をご紹介します。
   
  ●美々津、下駄のリズム
   
  宮崎市街を出たら、海岸線を北に向かってドライブ。単線路と並走しながら、その向こうにちらちらと海が見えます。しばらく進むと、港町・美々津に到着!耳川大橋で海野さんと待ち合わせです。
海側に車を停めて、まずは立磐神社に入ります。神武天皇ゆかりの由緒正しい神社で、すぐ側の公園には日本海軍発祥の地という碑が建てられています。この場所は、地元の人達の憩いの場となっていました。鳥居に結ばれた、円く形作られた縄をくぐることができます。
   
   
  宮崎市街から美々津へ向かう   海辺の公園
 
  立磐神社の鳥居に結ばれた、円い縄
   
  そして、美々津の路地をゆったり散策。ゆるやかな坂を、丸みを帯びた歴史のある石畳が埋め尽くします。明治時代からある古い家屋なども残されていて、その美しさにみんな見入ってしまいました。この地に住む佐藤さんより、旧矢野家の家屋内部を案内していただきました。見れば見るほど面白いところが見つかる不思議な空間で、居心地も良くてとっても気に入ってしまいました。まず入ってすぐ土間があり、箱階段をのぼって中二階、その隣の部屋は数段のぼって二階。一階にも部屋がいくつかありますが、天井の高さが部屋によって違い、そのため上の階も複雑になっているようです。
佐藤さんによると、この村のあたたかい雰囲気には道路の幅が重要とのこと。向かいの家が遠すぎず、近すぎずほどよい距離であることが魅力です。さらに、石畳のいいところは、下駄の音でその人の今日の気分がわかることだそうです。
たしかに、足取りのリズムを聞けば、顔を見るより先に表情がわかってしまいますね。下駄と石畳、いい音が聞こえてきそうです。
   
 
  旧矢野家外観
   
  旧矢野家内部   二階から一階を望む
   
  この村のあたたかい雰囲気には道路の幅が重要、という   下駄で石畳を歩く、足取りのリズムが聞こえる
   
   
  ●はまぐりづくし
   
  つい長居してしまった美々津を後にして、車はさらに北へ向かいます。日向市は、はまぐり碁石の日本唯一の産地だそうで、はまぐり碁石の里にて途中下車しました。貝殻を削って碁石へと加工する様子を見学する事ができます。碁は打った事がないけれど、さらさらした手触りと豊かな質感が気に入ってしまい、碁石ストラップをおみやげに買いました。
  そして少し移動し、おいしい貝づくしのお昼ごはんをいただきながら、海野さんからゆっくりお話をうかがうことができました。現在開発中の杉の瓦のことや、植林とエコについて。生きている木でも光合成でCO2を吸収するには年限があると聞いて、驚きました。「だからCO2は固形化して、閉じ込めるのがいい(=燃料としてではなく、木材として使う)。そして、また木を植えてきちんと間引く」というお話に納得です。
   
 
  貝殻を削ってはまぐり碁石へと加工する
   
   
  ●新・日向市駅!
   
  お昼の後は、新・日向市駅に到着です!遠くから見ても、風通しのよい明るい空気が伝わります。まずは市役所へ行き、和田さんと岡本さんより日向市駅リニューアルの過程をお話いただきました。市と県とJR、そして地域の人々が力を合わせて、町が大きく動いていく様子を知る事ができました。
  そしてついに日向市駅に入ってみることに。改札階の天井が杉でできているのですが、細かな高低差がついていて、遠くから見るとさりげなく縞々です。ホーム階へ向かうエスカレーターに乗ると、木の色があたたかい、明るい天井が見えてきます。ホームはゆったりと広がった、心地よい空間でした。ホームや待合室の椅子まで、杉でできています。見学中に、運良く特急列車が到着。赤をメインカラーに、とってもカラフルなかっこいい列車です。
  それから駅の周りも見学しました。通路の屋根やベンチ、コーンなどにも杉が使われています。10m以上はありそうな、大きくゆるいカーブをえがいたベンチがよい雰囲気です。また、この翌日は七夕のため、地元の子ども達が作った七夕飾りがたくさんありました。足型を採って、ぞうりの形にした短冊が可愛いですね。「夜は駅周辺がライトアップされてもっときれい」との事なので、夜にまた来ることにしました。
   
 
  今回、サムスンチームが宮崎へ行くきっかけとなった、新・日向市駅
   
  駅の説明をしていただく   ホーム階へ向かうエスカレーターから見える天井
   
  見学中に、運良く特急列車が到着!   ホームの天井が居心地よい空間をつくる
   
  駅の周りに置かれた、大きくゆるいカーブをえがいたベンチ   地元の子ども達が作った七夕飾り。足型を採って、ぞうりの形にした短冊が可愛い
   
   
  ●移動式夢空間と、塩見橋
   
  それから、駅近くの倉庫で見せていただいたのは、地元の小学生とデザイナーさんが共同で設計/実作までしてしまったすごい屋台「移動式夢空間」。コンパクトに見えて、実はいろんなところに仕掛けが隠れていました。屋台のふたを開いていくと、机や椅子や引き出しが現れてどんどん大きな空間になっていきます。しかも丈夫でかっこいい!授業でこんな体験ができたら、これからも工夫していろんなものが作れちゃいそうですね。
   
 
  小学生91人がグッドデザイン賞を受賞した屋台プロジェクト「移動式夢空間」
   
  地域交流の例はまだまだあって、たとえば日向市駅近くにある塩見橋の手すりは、年に一度みんなで磨いているのだそうです。ここにある電灯の杉は、遠くから見ると杉だって気付きません。時間が経って風合いが増し、すっかり周りの素材になじんでいるように見えました。
   
 
 
塩見橋にある電灯。思わずさわりたくなります。
   
   
  ●みんなで作る橋
   
  さて、そこから少し遠出して延岡までドライブ。さらに北を目指します。着いたのは上崎橋。この橋の手すりは大きな丸太をつなげてできていて、市民の方と一緒に組み立てやすいように丸太に切り込みが入っていました。よく見ると、丸太の裏には参加者によって文字が書いてある模様。実際に触れるもの、しかもなくてはならない部分に関わる事ができるから、きっと長く思い出に残るのでしょうね。
   
 
  延岡の上崎橋
   
  そして夜には、みんなでサクサク、不二カツをいただきました。そして「日向のとまり木」とんちゃんへ移動です。この界隈は、色とりどりのネオンに囲まれ、なぜかあったかい雰囲気です。お店をはみ出すくらいの人数で、いや本当にはみ出しながら思い思いに語らっていました。明るくてきぱきと料理をしながら迎えてくださった、とんちゃんのママが素敵でした。
  そして、帰りに忘れずに見たのが日向市駅の夜景です。木の色が、オレンジの光にてらされて温かみを増していますね。
   
   
  夕食は不二カツ   そして、とんちゃんへ
 
  帰りに見た日向市駅の夜景
   
   
   
   
  ●<たけもと・かおり>サムスングローバルデザインメンバーシップ2009学生
1986年生まれ、横浜市出身。音楽学部にて音響デザインを学んだ後、
現在は岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)でデザインやプランニングの勉強中。
   
 
Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved