特集 日向市のまちづくりと、プロジェクト本「新・日向市駅」発刊!
  出版担当者からみた「新・日向市駅」
文/ 大塚由希子
 
 

宮崎県日向市駅―。景観デザインの専門家・篠原修氏と建築家・内藤廣氏率いるGS(グラウンドスケープ)群団の今回の舞台である。10年という時間をかけ、駅と駅前広場を中心に、県・市・JR・専門家・市民たちと人が集まる空間づくりを成し遂げた。彼らは、これまでも水辺や駅などの公共施設・空間から、ダムといった構造物に至るまで、周辺のまちづくりも含めたトータルな景観デザインを行ってきた。それらプロジェクトはGS群団シリーズとして『都市の水辺をデザインする』『ものをつくり、まちをつくる』『ダムをトータルにデザインする』にまとめられている。

驚かされるのは、本の厚み。ひとつのプロジェクトをまとめるのに500頁近くの集大成になったこと。GS群団の面々は、これまでの閉鎖的な縦割り行政の枠を飛び越え、斬新な知恵とチャレンジングな精神を、着々と、時には嵐のように吹き込む、ねばり強さと潔さを併せ持つメンバーである。彼らが、このプロジェクトで関係者をどのように巻き込んで「わたしの駅、ぼくの駅」と胸を張れる景観デザインをつくりあげたか。関係者の証言でまとめられたストーリーは、それぞれの立場や事情が仕事の流れと絡み合い、独特な人間模様を醸し出している。「市民に愛される空間をつくる」―使う人の顔が見えてこそのデザインに向かって、専門家もそうでない人も、お互いが本音でぶつかり合う細部の描写は、読んでいてわくわくハラハラする。この一冊には、ものづくりの情熱と醍醐味が詰まっているのだ。

日向市駅ができるまでの物語は本とともにいったん完成。しかし本当の物語は、人々に愛され、故郷の風景として刻まれていくこれからにある。

 
   
   
   
   
 

●<おおつか・ゆきこ> 株式会社 彰国社 http://www.shokokusha.co.jp/

   
 
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