スギダラ2008年秋に向けて
文/写真  南雲勝志
   
 

月刊杉も3周年を迎え、4年目に突入。WEBデザインも一新して新たな気分でいきましょう。スギダラの設立はその一年前くらいだから5年目かな。(いつも正確に覚えていない。) もっと長い時間が経っているようで、実はそうでもないのだ。ナグモデザイン事務所設立は1987年だからかれこれ21年にもなるのに。(笑)
この4年間いろいろな事をやって来た。全国をまわり、ツアー、イベント、セミナー、コンペ、飲み会etc。良くも悪くもスギをキーワードにこれだけやることがあったものだ。 (実は杉だけではないのだが・・・)

さて、今回は34号から始まった「特集スギダラ秋の陣」で紹介されている、今年の秋のイベントをどう捉えるか? 今までやり続けて来たことと関連しながら少し自分なりに考えてみたい。

★34号特集は「秋田窓山デザイン会議
簡単にいうと消滅しそうな窓山をこれからどう考えていくか? を考えるデザイン会議である。 なにも窓山のような秋田の果てでデザイン会議をやらなくてもいいだろうに。と思われる方も多いと思う。
これはそれまでのプロセスを抜きに語れない。発端は秋田ツアーであった。日本の杉3大産地を見学しようと訪れたのであったが、名門秋田杉でも様々な難題を抱えている現状を知る。加藤さん、菅原さん、武田さん初め、多くの人たちと出会い、語った。窓山での今までの活動とこれからの夢を聞くときに、秋田の未来、日本の未来が重なってくる。これは一地方過疎地の問題ではないと・・・何とかしようと昨年内田洋行のバックアップのもと、窓山再生のための全国コンペを行った。そのコンペの優秀賞案を実際に実践し、地域とデザインの可能性を語りながら、広くは今後の日本のふるさとをどうするか? という壮大なテーマに挑戦する。今年はその発足の年とし、出来れば毎年継続して行くことを目標とする。今月号の秋田歳時記に詳細が載っているので参考にされたい。

★35号特集は「スギコレ2008in日向
今年で四回目になる杉コレは再び日向に帰ってくる。始まりは杉の普及を願い、宮崎発の全国への発信を目指してきた。回を重ね、今や杉の全国コンペとしては堂々と胸を張れるコンペになった。過去三回は杉の新たな可能性をめざして、毎回難しくも夢のあるテーマを重ねて来た。その度に日向、宮崎、都城と木青会担当部会が、森林関係者、木材関係者という今までの枠を超え、社会を見据え、大きく頼もしくなってきたことを実感してきた。
さて、 今年の杉コレに対し実行委員長である海野さんは、現実的に存在しうる道具としての作品を期待している。つまり商品として成立するものづくりをめざす事で社会や生活に根ざした杉の文化に挑戦しようとしているのだ。コンセプトや理想論を経て現実の社会へフィードバックしてみる。これも今までの積み重ねがあったからこそ出来る内容だと思う。汗臭い山の男達と日本の文化、いかにもくっつきそうにない組み合わせがきっと生まれていく。スギのデザインコンペとして集大成の年になりそうだ。
実はもうすぐ「杉のメッカ」、内田洋行 新川オフィスにて一次審査が行われる。当日は応募された全作品をオープン展示する。また審査委員長 の講演、「内藤廣の面白スギる話」やパネルディスカッション、プレス発表と杉コレを初めて東京から発信しようという試みだ。
※参加申し込み及び詳細はこちら →http://sugidarake.exblog.jp/9411513/

★37号特集は「民家でスギのデザイン展
北部九州を舞台に有馬さんの実家、元酒造蔵「白水」でスギのプロダクトの展示会+イベントを行うというものである。 北部九州は杉で生活道具をつくるスギクラフトの溝口さん、池田さんを中心にモノ通じて杉の良さを発信してきた。その輪をグッと広げようということらしい。 その企画を必死で切り盛りしているのが、3年前までフツーのOLであった佐藤薫さんというところがとても興味深い。杉を業界や専門家から解き放し、もっと市民レベルに広げる必要性をスギダラはずっと持っていたからだ。といっても佐藤さんは全国スギダラツアーを転戦し、もはやスーパーOLとなってしまったが・・・専門家のためではない、市民がつくるスギダラの初の展示会としても位置づけられる。 美しい自然環境と魅力的な蔵空間で織りなされるデザインと人と生活のプレゼンテーションはとても盛り上がりそうだ。加えてなんといっても若杉さんの今までにないノリが何かを期待させる。

また、特集こそしていないが、最近のスギダラトーキョーの活発な動きは萩原さんの文章を読んでいると手応えを感じる。潜在的な力はある。それを合わせれば強力な何かが生まれそうだ。やはり秋に予定している関西の子供スギコレも単なる思いつきではない、今まで地域や子供をとしっかりと付き合ってきた活動の延長線上にあるからだ。

それらにいずれも共通していることはデザインが重要なキーワードになっていることである。
スギダラはチマチマせず、デザインなんて言葉はあまり簡単に使わず、人と人を結ぶものの魅力、人が楽しみ、自分が楽しみ盛り上がる重要性、そして地域のオリジナリティーと魅力、そこに必要な必然性、などを探し求め、模索し、実践し、コツコツ、ガツガツやって来た。
そんな中から初めてデザインの本質が見えてくると思っていた。
まだまだそれなりの答えが明確になっていないにせよ、ネットワークは広がり、スギダラの目指す大きな方向性は何となく口ずさめるようになってきた。これは月刊杉でも今までの体験を発信し続けてもらったところが大きい。ようするに理屈より先に感じたことを先ず実践し、それを後から確認、整理して来たのである。

今年の秋のイベントはそんな今までの経験を前提にした上で、スギダラ的方法論の一つの区切りとして、いよいよ見える形でのケーススタディーとして位置づけられるような気がしている。 デザイン界(漠然としすぎているが)に於いて、スギダラの目指すデザインとは? という思想がより明確になる記念すべき年になると思っている。
それぞれのイベントの参加メンバーを見てもらえると理解していただけると思うが、多くの仲間と、強力な協力者達が実に快く参加を引き受けくれている。
決して楽観的に見ているわけではない。その可能性と同時に感謝と責任を感じつつ、大いに秋に向けて楽しみたい。こんな楽しいことはそうないかも知れない。そう思うとワクワクする。
これから各担当者、当事者の皆さんの準備は大変だと思う。何とか少しでも良い結果を出せるよう、出来るだけ多くの皆さんの協力を仰ぎたいと思っている。スギダラはチームワークだ。
そして12月はみんなで楽しい忘年会をするのが今から楽しみである。
スギダラはもはやデザインである、といいながら・・・

   
 
   
 
  スギダラはゆく・・・
   
   
   
  ● <なぐも・かつし>  デザイナー
ナグモデザイン事務所 代表。新潟県六日町生まれ。
家具や景観プロダクトを中心に活動。最近はひとやまちづくりを通したデザインに奮闘。
著書『デザイン図鑑+ナグモノガタリ』(ラトルズ)など。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部
   
 
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