連載

 

スギダラな人々探訪/第32回 スギ関の裏番長 ふらふらし杉

文/ 千代田健一

杉を愛してやまない人びとを、日本各地に訪ねます。どんな杉好きが待ち受けているでしょう。

 
 

前号では某自動車会社の木工ワークショップで奮闘してくれている八汐木工の片見さんのイカれたお話をさせていただきましたが、このプロジェクト、もう一人のイカれたスギダラな人が関わってくれています。
その名もスギダラ関西支部の裏番長と言われているふらふらし杉こと水木千代美さんです。最近はオラオラ杉って言われているらしいですが・・・「オラオラ!」
裏番長がいるんだったら、表の番長は誰なんだろう?って思いますよね。特に言われてないのでしょうが、流れからすると石橋さんが番長ですかね。まあ、番長が誰かはともかく、裏でスギ関を取り仕切っている黒幕的存在、つまり関西支部にとってとても影響力がある人物ということですね。「オラオラ!」

水木さんには過去に月刊杉28号でも記事を書いていただいています。
http://www.m-sugi.com/28/m-sugi_28_chiyo2.htm
水木さんはその記事でも書いていただいたように、関西支部のメンバー、公園杉こと縄地美穂子さんと一緒に「ゆめのみ公園プロジェクト」というものを運営されています。
ゆめのみ公園プロジェクトを一言で言うと、自分の住む地域を人が集まる「公園」を起点に愛着のあるものにして行こう!ということになるんでしょうか? 公園のようにいつの間にかできてしまってて、どこか他人事だったものを自分事にしようという思いで、縄地さんと水木さんという強烈な女性二人が中心となって活動しているグループです。現在は、子供に社会の仕組みを学んでもらいながら将来へのビジョンを養ってもらえるような活動をやっています。何と「コドモスギコレ」ですって!
海野さん、パクられてますよ!(笑)
実はコレにもウチダラ洋行で絡んでいます。
詳細はスギ関のブログで→ http://sugikan.exblog.jp/8488801/

最近はこのコドモスギコレのように子供がらみのプロジェクトが多いようです。この二人がすごいのはそこに集まってくる子供たちを子供扱いせずに接しているところです。半ば、子供達を会社のスタッフのように扱う。関わってくれる様々な職種や分野の大人達、いわゆるプロフェッショナルと接することにより、社会の仕組みと本物の仕事を学び、学校教育ではなかなかリーチの届かないところ知る機会として素晴らしいと思います。それとチームの中で役割を担って行って、目標を成し遂げることにより達成感をみんなで共有するということも・・・これはスギダラ3兄弟でやった宮崎県日向市の移動式夢空間の授業に通ずるものがありますね。
2004年からやっているこの活動、最初の2年間は吹田市の、後の2年は主に国が主体となった助成金を受けているそうですが、水木さんたちの活動の全てはボランティアです。

よりよい社会、未来を目指して、「ゆめのみ」にもスギダラと共通するキーワード「みんなで楽しむ!」というのがあります。みんなで楽しむわけですから、スギダラにもその手が延びてきて当然ですよね。おまけに「ふらふらし杉」というだけあって、ふらふらっと、どこにでも出没してしまう人ですから・・・

今回の某自動車会社の子供向け木工ワークショップの件では、勝手にふらふら現れたのではなく、4月に行った北山杉ツアーおよびもくちくカフェにて知り合った本部の若杉さんに引っ掛けられ、やっぱりふらふらとスギダラ本部にやって来たのでした。僕はそれまで何度かメールでやり取りしていましたが、この件で初めてスギ関の裏番長に直に会うことになるわけです。僕は言われていないけど、「何ゆーてんのん、このひと?」「アホちゃう?」「いい加減にしーやー」みたいな言葉は似合いそうです。確かに最初にあった時から「オラオラ」って言っていたような気もする。(笑)
まあ、その人となりを簡単には説明できませんが、見た目は結構おっとりしてるのに、想いは強く、思い込みも激しく、行動はヤケに身軽で猛進型、何も考えてないように見える程動きが速い!
例えて言えば、若・千代の悪いところ、いや、いいところ?を足して2で割ったような人でした。まあ、そんなことはどうでもいいですね。

今回の件で若杉さんが目を付けたのは、水木さんがやっているもうひとつの活動、福祉施設をネットワークしたものづくりによる社会貢献活動の方で、こっちも早い話がボランティア。何をやっているかと言えば、木でできるオリジナルグッズの製作を通して、知的障害者の方々の社会参加の機会を創造してるってことだと思います。ここでもスギダラと共通するものがありますね。「木」を素材にすると多くの人が関われる。何と言ってもこれに尽きる。「木」というのは人を繋げてゆく潜在的な力を持った素材だと思います。
水木さんはこのものづくりによって、自治体とか企業等の受け入れ側と地場産業、地域の福祉施設を繋げてゆこうとしています。作っているのは箸やコースター、鍋式等の実用品で、デザインも極めてシンプルなものですが、素晴らしいのは、単に木工小物を作るだけでなく、この活動におけるものづくりの意義を記してプロモーションをし、一種のブランドをつくっているところです。
今回はその某自動車会社のプレミアムグッズ作りに当ててみようと提案したところ、快く受け入れてもらえました。
当初は販売店で配るプレゼントグッズにも使えるというアイデアも出てきましたが、まずはその木工ワークショップに来てくれる親子に参加の記念品として持って帰ってもらえるものを用意することになりました。水木さんは早速、看護士だった片見さんの奥さん繋がりで紹介していただいた施設にコンタクトを取り、2つの施設が一緒にやってくれることになります。そこからはふらふらではなくシャキシャキと活動してくれました。猪突猛進って感じです。
実は既に今回用意する品物は出来上がっているのですが、水木さんはその間、2度程ふらふらと施設に通ってくれて、製作の手順を指導してもらいました。

   
 
 
八汐木工にて試作品を作る水木さん
 
 
「こんなんでええんかなー?」
 
 
お箸、ペンダント、マグネット、ペン立て・・・今回用意するグッズの試作です。
   
 

片見さんといい、水木さんといい今回の木工ワークショップの準備には随分助けられた、と言うか殆どやってもらったにも関わらず、未だにワークショップの実施日が決まっておりません。
9月には実施できるよう現在調整中なので、実施が決まったら改めてレポートさせていただきます。
今までは大阪だけでやっていた福祉施設のネットワーク作りが栃木にも広がりました。水木さんのこの活動は、受け入れ側になる企業等団体にとっても社会貢献にも繋がるし、とても意義のあることです。スギダラにとっても今までに無い繋がりと杉の新たな可能性が見えて来た感じがします。スギダラは水木さんや縄地さんのように想いを具体的行動に移せるタフでしっかり者の女性に支えられているなって痛感します。スギダラ総出で応援したいですね。

コドモスギコレの方もうまく動き出しているようなので、この秋はスギダラは大変なことになりそうです。9月には杉コレの1次審査を東京の内田洋行で・・・10月は秋田窓山デザイン会議、宮崎日向の杉コレ、ソウルでウッド楽フェスティバル、11月には大阪吹田市でコドモスギコレ発表会、佐賀でスギダラ展示会・・・
これに全部参加するだけでも大変そうです・・・よね?(ち)

   
   
   
   
 
●<ちよだ・けんいち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンター所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
   
 


 
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