連載

 

杉で仕掛ける/第11回・実践編 「日向市駅周辺のスギダラ的鑑賞法」 

文/ 海野洋光

 

 
 

まず、海杉は、仕事をしていない。霞を食べて、何とかしのいでいる。一時は、仕事ができないくらいボランティアやまちづくりをやっていた。(今もだけど…)朝から晩まで…。そんなのが何になるんだ?と同業者(建設業者)からは、陰口を叩かれていることも知っていた。木材業者からは、なぜそこまで、一生懸命なんだ?と逆に質問を受けたりする。答えは、「自分自身でも分からない??」
南雲さんや内藤さん、小野寺さんのデザインした杉のファニチャー類は、全て海杉が関わらせていただいた。もちろん、杉コレクショングランプリ作品
(参考:http://homepage2.nifty.com/shinkano/compe/hyuga/hyuuga.htm)の狩野さんの「スギナミキ」もだ!
笑い話だが、霞をいくら食ってもお腹いっぱいにならない。だから、いくらでも食える。多分、海杉も杉の霞はたくさん食っているけど、南雲さんの方がちょっと多いと思う。
そんな海杉が、「日向市駅周辺の杉ダラ的鑑賞法」自信をもってお勧めする。多分、コレだけで本が一冊書けるのでは、と思う今日この頃だ。

はじめは、どうしても、日向市駅のホームからだろう。列車から降りたら、まずは、深呼吸。すぐに杉の天井を見上げるだろうが、ぐっとこらえて、日豊本線とクロスする東西の道を探して欲しい。東の道は、まっすぐに細島商業港に突き当たり、眼下は、太平洋が見える。西の道は、富高古墳
(参考:http://www.city.hyuga.miyazaki.jp/bunkazai/browse.php?number=9)に突き当たる。小さな小山は、金が採掘されたという伝説もある。この都市計画的クロスラインは、日本中捜してもなかなかお目にかかれないと思う。「昔、駅から海が見えた」というお年寄りの話を知っている海杉は、勝手に昔の日向市を知っている方々に懐かしい演出ができると企んでいる。日向市のまちづくりは、この軸線を上手く利用した計画が、ポイントだと海杉は密かに思っている。

日向市駅の杉の天井は、いきなり、メインディッシュ、光、色、形状、構造、そして、匂い。建築の鑑賞法は、さまざまだが、最初に内部空間を見せるという手法は、駅舎ならでは…だ。しかも、匂いつきだからたまらない。
この建物を見るなら、北からでも、南からでも良い。要するに日向市に来るなら列車で来てほしい。

   
 

●スギダラ的鑑賞ポイント1

   


しかし、スギダラは、唯の建築鑑賞ではない。よく見て欲しい。杉の変形大断面集成の切断線を…。

   
 

●スギダラ的鑑賞ポイント2

   
 

次にホームにある「スギナミキ」を見てみよう。2004年日向市で行われた杉コレクション
(参考:http://www.city.hyuga.miyazaki.jp/division/develop/sonota.html)のグランプリ作品だ。この作品がグランプリを受賞した決め手は…。杉コレ審査委員長の内藤廣氏は・・・。どのような点を評価したのだろう。知りたい方は、日向に来て下さい。
そして、めでたくホームに設置することになった。作者狩野さんは、この作品の製作に当たって、地元の木工屋さんに自分の想いを伝えるために関西からわざわざ日向まで来たのだ。職人さんに「自分の未来が掛かっています」と深々と頭を下げたときには、職人さんも、面食らったが、その真剣さが十分伝わった作品に出来上がっただろう。45×45の角材が、ここまでみごとにベンチになるとは誰も想像しなかった。このスギナミキの製作に当たっては、固定方法にいくつかの仕掛けをしている。じっくり見てほしい。
スギナミキと言う名前は、実は海杉が勝手につけた。昔の名前は「ナミキのいす」だったか?波と並木を引っ掛けて付けたすばらしい名前だったが、「杉波木(スギナミキ)」にしてしまった。実は、日向市の観光名所には、柱状岩で有名な「馬が背」(参考:http://www.pmiyazaki.com/hyugamisaki/umagase.htm)がある。杉コレに参加した市民は、この柱状岩をイメージして作ったと口々に話していた。断崖絶壁の景勝を一度、見てほしい。

   
  ●スギダラ的鑑賞ポイント3
   
  ホームとスギナミキで原稿の3分の2が終わってしまう。でも、連載なんだからゆっくり、書こう。
   

ホームの両端には、不細工な既製品の白いフェンスがある。日向市駅舎の金属は、燐酸亜鉛鍍金(参考:http://www.sinwaht.co.jp/115.html)のグレー色だ。手前には、JRの標識があるのだが、当初、この標識のポールは、白だった。施工中、内藤設計事務所の所員Y田さんは、現場の白い標識のポールを見るなり、ホームに崩れた。「なんだ!!この無粋なポールは???」JRの標識のポール色を知らされていなかったらしい。「明日、内藤が来るって言うのに!!」Y田さんの目は、「見せられない」「どうしよう」と焦っていた。海杉は「なんでも、透明になる塗料があるんですよ」と話した。「どこにあるんですか!」と
恐      ろ      し      い      く      ら      い
真剣な目だった・・・。海杉が、話していた透明になる塗料も見てほしいなあ。
軽い冗談は、このくらいで、階段の手摺。これも杉です。圧密加工という技術を使用しています。この圧密加工は、フローリングや手摺の建築の技術だけでなく、印鑑(参考:http://www.zirmina.com/cart/sugi.htm)にも応用されています。
おっと、大事な杉作品を忘れるところだった。
では、次号をお楽しみに・・・。

   
   
   
 
●<うみの・ひろみつ>日向木の芽会
HN :日向木の魔界 海杉
   
 


 
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