今回は文学ではなく、エッセイのようなもの。。。あれ、エッセイって文学でないのかな。文学的なエッセイもあるけど。。。ともあれこの本はなんというジャンルに入るのかわかりませんが、杉が出てくるのでとりあげてみました。
何年か前に読んでしばらく忘れていたのですが、読み返すと、教育について書かれていました。
著者が夢で杉の精である「杉森林太郎」という老人にあって、教育について話し合うのです。杉と教育に関心のある方はぜひご一読を。
ここでは杉の精は杉林的な教育が日本をだめにしている、と説きます。ひとことでいうと画一的な教育です。杉一色に植林された風景を美とする感覚が日本人に浸透していて、それがひずみになってあらわれているというのです。
一般的には稲作が日本人をつくっているようにいわれているが、杉文化はもっと古く日本独自のものだというのです。とても役にたってきたが、悪影響も根が深い。それを杉の精にいわせているところが、うまいなあ、と感心します。
わたしがこの本の中でいちばん印象的だったのはエリートについてのこと。教育の失敗点は高級官僚などのエリートをみればわかるのですって。不祥事を起こしたときのあやまりかたのワンパターンさ、責任感のなさ。あやまり方はまるでマニュアル通りにいっているだけ。でもマニュアルが暗記できるというのが、試験でかちのこっていく才能なんでしょう。ばからしいったらありゃしないけど。。。絵だってそうだと思う。試験用のデッサンがいくらうまくても、ほんとうの(というのがあるのかどうかもよくわからないけど)芸術とは違うものね。たいていの役人や、古い体質の会社にもはびこる「ことなかれ主義」は、杉林が原因だったと、まあそう簡単にいってもらっても困る、とも思いますが、たしかにそうでもあるのでしょう。
風景というのはわたしたちに大きな影響をあたえているのですね。たしかに均一で整然としたものは美しくもある。でもつまらなくもある。渾沌と複雑なものから美しさを見いだす目、渾沌としたもののうつりかわるバランスを体得したい。切に願うよ。自分じしんに対しても願うし、これからの子どもたちはそれがいちばん大切ではないのかしら。人それぞれで、整然としたものを好む人も当然いて、でもその人も自分の性癖はしりつつ、そうでないものをみとめていける、そんなふうに、いろいろな世の中を、そのままにうけいれたい。
杉と人との関係。また新たな展開が必要なのでしょう。画一の中からは味わい深い文学もうまれないですよね。
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