連載

 

杉で仕掛ける/第6回 「スギダラ宣言を考える・後編」

文/ 海野洋光

 

 
 

前号では、
どんな団体でも明確なビジョンがなければ、活動の手段が目的になったり、それぞれのメンバーが目的を勝手に作り始めるなどと、何のための活動なのか見えなくなる。また、明確なビジョンがあっても、社会的なミッションが備わっていないとメンバーの情熱を損ない、士気も下がり、当然、多くの人に賛同を得にくい。明確なビジョンを掲げ、誰もが納得する社会的な使命があれば、協力や連携がスムーズにいく。しかし、海杉は、大変有意義な活動をしている全国各地のまちづくりグループが、スギダラのような連携が取れないで悩んでいるのではと考える。その違いは、インターネット上に掲げたスギダラ宣言だ。倶楽部のビジョンとして外部の人にも明確に示す役割を持っていると同時に、「自分たちのまちを・・」と言う枠ではなく、「日本を・・・」というカテゴリーに広がりを持たせている。宣言は、メンバーに全国どこでも誇りを持って活動できると感じている。あれこれと文章で書くより一番感じてほしいことは、スギダラな空間(日向市駅周辺)を味わってみてほしい。
と書いた。   
なんだ!たった447文字で終わるじゃないか。 怒らないでください。だらだらと書くことで無理に1話読み切りを広げているのですから・・・。あはは!!

日本のまちづくりが、うまくいかないのは、民主主義が成熟していないため?
どんなにすばらしいビジョンを掲げても心地よい空間を作り出せなければ、自由に闊達に会話ができなければ、団体やまちも衰退していくのでしょう。日本全国杉ダラケ倶楽部という団体が。着実に伸びる秘密は、自分たち流にあるようです。木材と言う切り口から、海杉は、入りましたが、デザインからも入れますし、環境問題からも入れます。教育、公共工事や土木、建築からも入ることができます。そこにエネルギーを集中させることのできる集団が、これからの日本の未来を切り拓くことができると思っています。今まで書いてきたようにスギダラには、さまざまな仕掛けは、ありますが、全てメンバーが、杉という素材を使って、心地良い空間で楽しく、語り合える工夫をしているかどうかと言う点に絞られます。インターネットやメールもその空間の語り合いの脇役でしかありません。メンバーが、「スギダラって楽しいね」と話していることを何度も聞きます。

   
   
 

前号の最後に「自分たちの住む自分たちのまちをどうするか」を常に考え行動することによって人類の考え出した『民主主義』が、本当に成熟して、多くの人たちに幸せをもたらすと思っています」と脈絡のない大きなことを書きました。海杉は、日本のまちづくりが、素晴らしいビジョンを掲げてもうまくいかない原因のひとつに「民主主義」を何か別世界のような扱いをしているのでは?と疑問を持っています。長い歴史の中で人類が作り出した、「民主主義」は、人々が幸せになるために作られたシステムなのですが、日本では、上手く機能していないみたいです。「民主主義」が成熟するには?どのようにすれば良いのでしょうか?その答えは、「スギダラ宣言」が実に近いところにあると海杉は感じています。

   
   
 

空間が人間に与える影響力は、いまさら語ることはありません。その町がどのように進むか、また、衰退しているのかは、その町の空間に触れてみれば、大方、掴めるものです。宮崎県木材技術利用センターの有馬所長は、面白い実験を行なっています。木の箱で育てたマウスとコンクリートの箱で育てたマウス、鉄の箱で育てたマウスの育成実験です。マウスの生育が、木の箱が断然、良いのです。
スギダラが作る杉の空間を楽しんでいただくと良くわかるのですが、心地よい空間は、人が集まり、次第に会話が生まれます。空間に有機的なものを使うことが人間だけでなく、生き物全てにも良いことが、この実験でも実証されたわけです。海杉は、このような空間の中で生まれた合意形成を『有機的民主主義』だと思っています。

海杉と同じことを考えている人がいました。
【参考文献】人間のための都市設計  レスター・R・ブラウン
http://www.earthpolicy.org/Books/Seg/PB2ch11_ss7.htm

海杉の考える有機的民主主義は、堅苦しいものではなく、「この空間をどう楽しくするか」「自分たちの住む自分たちのまちをどうするか」「人が幸せに(愉快に)なるには・・・」などをみんなでわいわい楽しく話し合うことでしょう。スギダラで発信できるなんとも心地良い空間は、なぜか、この心地良さを必ず、他の人に言葉で伝えてたくなる自分がいるのです。

   
 

『有機的民主主義』は、海杉の造語ではありません。20数年前、大学生の時に知りました。建築家やデザイナーの方ならご存知と思いますが、アメリカの建築家フランク・ロイド・ライトの著書です。題名がすこぶる海杉のフィーリングにあっているのです。この本は、日本ではあまり知られていませんが、「オーガニック・デモクラシー」!!と言います。ライトは、近代建築の巨匠ですが、政治家ではありません。この本の翻訳は、実は、宮崎県知事にもなった二見甚郷氏なのです。(東●原さんではありません)宮崎県のイベントが起爆剤になり、このスギダラが始まったことも、運命のようなものを感じます。もっともっとスギダラの想いが、全国にいえ、若杉さんが言われるように全世界に通じるものになるとひとりで夢を膨らませている海杉でした。

   
 
  日向のスギダラ空間
   
 

いよいよ完成!日向駅舎西口キャノピーの工事風景

  全まちのスギダラ空間
   
   
   
   
 

【予告】
日本全国スギダラ倶楽部編は、ここで終了しまして、次回からは、実践編に入ります。どうぞよろしく!!

   
   
   
   
 
●<うみの・ひろみつ>日向木の芽会
HN :日向木の魔界 海杉
   
 


   
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