特集 杉道具 「暮らしをささえる杉の道具たち」

 
醤油屋「マルマタ醤油」の蔵に眠るたくさんの杉道具
文・写真/ 緒方万貴
 
 
   

私の実家は林業と醤油屋を営んでおり、母と私が林業、父が醤油屋を継いでおります。 しかし、私は自分が林業をしているにも関わらず、自分の父が醤油屋をしているにも関わらず、自分の家にスギでできた醤油の道具達が沢山居ることに気づいてませんでした。 薫スギ姉に「バルさんのおうちにはきっと沢山あるはず」と言われて、父に「スギの道具ってあるの?」と聞くと、「あるよ」と! 父について行くと・・・なんと沢山ありました。見せるときが来たらと思って取っておいたのだそうです。

ここでは父で4代目となる「マルマタ醤油」についてご紹介します。

マルマタ醤油は1859年に創業(安政6年:これは樽の底板に記されていたとのこと)しました。創業者は合原又七郎で母の曾祖父にあたります。醤油屋に転業する以前は、薬の計量をおこなう機械を取り扱っていた、山田屋という大きなお店の番頭さんをやっていたようです。

   
  計量器具   品質無双
  両わきに置いてあるのはには昨年度千年明かりで作られた竹の看板と、昔醤油を持ち帰るのに使っていたとっくりです。これで醤油を買いに来てたそうです。その他にも樽で配達してたようです。小鹿田や小石原で焼いてもらったものです。   「品質無双」!!今でもモチロン同じです!!
   
  何を考えて醤油醸造に転業したのかはわかりませんが、今でいう所のベンチャー企業だったわけです。そのころは、お酒屋さんからスギ樽をもらって、作っていたこともあったようです。薫りを移すためだ!という説はよく聞きますが、父はコスト削減という理由だからだろうと踏んでいます。
   
  計量カップ   計量カップ
  この穴に指を入れて、大豆・麦をすくって他の袋に入れための道具です。 すりきりで量っていたようです(お米を量る計量カップみたいなもの)   穴に指を入れている様子。
   
  ためし桶   大豆・小麦を量るための道具
  ためし桶。この中に醤油を入れて、置いてるものもあったようです。   大豆・小麦を量るための道具です
       
  諸味を絞る前に袋の中に移すための道具
  諸味を絞る前に袋の中に移すための道具
   
  蒸篭   蒸篭
  蒸篭ですね。大豆を蒸すための道具です。   蒸篭の細部。釘を使用せずに、作られていますね。
       
  蒸篭
  蒸篭の上面
   
  ふるい   ふるい
  ふるいの側面。これで小麦をふるっていたそうです。   ふるい。編み目の部分は馬の毛周囲がスギです。
   
  桶   色んな桶達、半切もありますね。とても大きな樽の底板には安政16年と記されていました。 昔、桶を作るときには底板に必ず作った年を記していたそうです。
   
  非常にいい味を出してる道具達です。見れば見るほどにかたち・色・艶とても素敵です。母が小さい頃までは大工さんがよく出入りしており、これらの道具の修理や簡単な道具を作ったり、子供におもちゃを作ってくれたりしてたようです。今は、樹脂製の樽・ガラス瓶・プラスチックのケースに醤油は入ってます。しかし、ゆっくり時間をかけて育てられたスギを道具にして、ゆっくり醤油が作られるのって、素晴らしいことなんじゃないでしょうか。杉でつくられた道具達をもう一度使ってみたいと感じました。少しずつではありますが、スギの道具達の復権を周りに伝えていきたいです。
   
 
   
  バルスギさんこと緒方万貴さんは杉九三姉妹の三女。20代後半にはいったところ。時間の流れの遅い次女はすっかり追い抜かれてしまいました。
実家が林業と醤油屋をしております。 バルスギさんは林業の道にはいられております。
実家の醤油屋「マルマタ醤油」の蔵に眠るたくさんの杉道具 をご紹介頂きました。(薫杉・杉九三姉妹の次女)
   
   
 
 
  ●<おがた・まき> (旧姓:合原 ごうばる)
1980年生まれ。大分県日田市在住。
実家の林業の道に入り3年目。 「楽しい山作り」を目指す。ユンボも操れるマウンテンバイカー。
   
   
   
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