連載

 
あきた杉歳時記/第18回
文/写真 菅原香織
すぎっち@秋田支部長から、旬の秋田の杉直(さんちょく)だよりをお届けします ・・・・
 
  窓山米
  刈り入れの時を待つばかりの窓山産米
   
 

いよいよやってきました!食欲の秋?それももちろんですが、スポーツの秋ですよ!そう、国民体育大会略して国体!国民のスポーツの祭典第62回秋田わか杉国体がついに始まりました。9月29日から10月9日まで、秋田県内各地の競技会場で、熱い戦いが繰り広げられました。じつは私のハンドルネーム「すぎっち」も、わか杉国体のマスコット、「スギッチ」からいただいたものです。今や、「全日本ゆるキャラ選手権」に優勝した「日本一ゆるいキャラクター」として、ご当地ヒーロー「超神ネイガー」と人気を二分する人気者のスギッチにあやかって、「杉」も人気者になってほしいなと思います。

さて話は変わり、去る9月9日〜11日、2泊3日で宮崎に行ってきました。杉を活かしたまちづくりの先進地である宮崎の取り組みを一目この目で見たい、触れたい、とずーっと思い続けてきたのですが、やっと念願叶って初九州上陸できました。まさにひとり「スギダラツアーinミヤダラ」です。

コトの発端は、10月の杉コレクションの最終審査に秋田支部長として参加しようと考えていたのですが、同じ日に秋田で「第4回木の建築賞(北海道・東北・新潟地区)」の第二次審査と見学会があり、どうしても宮崎に行けなくなってしまったのです。お詫びのメールをしたところ、ミヤダラ支部長の海杉さんの粋な取りはからいで、第一次審査を見学させていただけることになったのです。しかも、最終審査のときには見られない作品が100点以上も集まるし、審査委員長の内藤先生や南雲さんにもお会いできるし、どうせなら宮崎のスギダラスポットを巡ってミヤダラメンバーとの交流もしたい!そこで2泊3日で回れるだけ「スギダラ巡礼計画」を練ることにしました。

とはいっても、宮崎はどのぐらい広いのか土地勘もないしさっぱり見当が付かないので、ミヤダラ支部長の海杉さんとハルスギさんにアドバイスを受けて、大まかな旅のスケジュールを組みました。まず9日は午後に日向市駅、塩見橋、上崎橋。翌10日は天満橋、コンビナートの防風柵、午後は杉コレクション第1次審査会場の都城。11日には油津へ足を伸ばして、夢見橋と堀川運河。10日の夜にはミヤダラメンバーと交流することになりました。かなり盛り沢山な内容です。

さて9日、一便の飛行機で秋田を発ち、途中羽田で乗り換え11時30分には宮崎空港着、迷うことなく「日本一乗り換えが便利なJR宮崎空港」から日向市駅までは1時間あまり、ついに念願の日向市駅に到着!ネットでは見ていても、やはりその場に行ってみないと分からない空間を体験できて感激です。ひととおり海杉さんから解説を受けながら日向市駅と周辺を見たあと、近くの有名なトンカツ屋さんでお昼をいただきました。

その後、塩見橋を見てから一路上崎へ。川沿いの道を遡っていくと、遠くに景色にとけ込むような色合いの橋が見えてきました。この辺は鮎釣りのメッカとかで、エメラルドグリーンに輝く川面にたくさんの釣り人がいました。近くまで来ると、さっきまでは風景にとけ込んでいた橋が鮮やかに目に飛び込んできました。

上崎川の橋のたもとに車を停めてゆっくり渡ってみました。上崎橋の手すり、親柱、杉を使う上での配慮が、細かいところまで行き届いているのには本当に感心しました。ちょうど通りかかった地元の方にも会うことができて、ラッキー!この橋は本当に地域の宝だなと思いました。海杉さんの「この親柱のデザインをよく覚えておいて下さい」という謎めいた言葉を残し、車は延岡へ向かいます。

延岡には南雲さんがデザインされた街灯がある通りがあるそうで、通りに面した文化会館の駐車場に車を停めて早速パチリ。電柱埋設がしてあって、スッキリとした通りに微妙な色合いのシンプルでいて曲線の美しい街灯があり、通りに面している学校の「からみ煉瓦」の塀ともよく合っていました。「このリブのとこ、よく覚えてて」という謎かけ第2弾。

そろそろ日没ということで、夜の塩見橋を見に日向市へ。途中、海岸沿いに春に敷設したばかりという杉チップの歩道を案内してくれました。アスファルトと違って柔らかい感触でした。海岸には流木が点々と山積みされています。これは山にうち捨てられた木や廃材が川を下り海に流れ着いたものです。漁師さんたちにとっては漁場を荒らす原因になるということで、この日ボランティア清掃があったとか。これは海岸の砂のなかに埋めてしまうほかないそうで、山の問題=海の問題なんだなと考えさせられました。

さて夕暮れ時、オレンジ色の街灯に照らされて、散歩をするご夫婦やジョギングをしている人など、日常の空間に杉がとけ込んでいます。冨高小学校の子どもたちが一生懸命磨いている手すりがこれだったのねと、しばらく塩見橋でゆっくりしたあと、日はとっぷり暮れましたが、耳川近くの「美々津」の伝建群を見に行きました。ちょうど家々の軒先に七夕飾りがしてあったので、旧暦のお祭りだったのでしょうか。低い軒先、石畳の通り、風情のあるまちなみをぜひ昼間見に、また来たいなと思いました。

宿は宮崎のホテルメリージュ(スギダラ御用達?の宿)だったので、日向市駅前のカフェで軽く遅い食事をして、最終の電車に飛び乗り宿に戻ったのが11時半。シャワーを浴びたあと、天気を確認しようとベッドに横になりながらテレビのリモコンを持ったと思ったら、気が付くと朝になってました。

2日目の朝。昨日は曇りぎみでしたが、きょうは「南国宮崎」らしい青空が広がりました。この日は朝一番に宮崎県庁へ。テレビカメラを構えた取材陣が、知事の入り待ちする観光客?の人たちを取材でもしているのでしょうか、早朝から県庁前はすごい人出です。(秋田だったら絶対「ババヘラ」がいるぐらい!)県庁の入り口は「看板」知事と記念撮影をする人でごったがえしていました。

11時に宮崎空港に到着する内藤先生と南雲さんをピックアップして都城に行く前に、1時間半コースで大淀川にかかる「天満橋」と宮崎港の石油コンビナートの「防風柵」を見に行きました。県庁前の通りは楠の大木の並木だったのが、少し走ると「フェニックス」が街路樹になっているのに「おっ!さすが南国!」という感じがしました。

そして「天満橋」。見てきましたよ!ここでもスギッチ感激ィ―!いや、ほんとにうらやましいですよ、こういうことができるってことが。やっぱり「デザイン」って大事なんだってことをひしひしと感じます。そして昨日の謎かけの答えも見つかりました。なーるほど、そういうことでしたか。(答えが知りたい人は北のスギダラ見て下さい。)

しばし、大淀川からの眺めを楽しんだあと、防風柵を見に行きました。防風柵も美しかった。中年男女が黙々と防風柵に向かう眺めは奇妙だったかも知れないけど(笑)どこまでもつづく杉のトライアングルにしばし見とれておりました。杉、やるじゃん!晴れ渡る青空をバックに、それは一つのアート作品といえるほどの迫力でした。

空港に南雲さんを迎えに行ったあと、杉コレクションの最終審査会場となる公園を望むレストランで打ち合わせを兼ねてお昼。終わって駐車場に向かっていると誰かが私の名前を呼ぶ声が聞こえます。え!?っと振り返ると、そこになんとハルスギさんがいたのでびっくり!偶然、近くで会議があったそうなのですが、タイミングといい、不思議なご縁を感じずに入られません。

さて、都城の宮崎県木材利用センターでの第一次審査の報告はミヤダラにお任せするとして、東京にとんぼ返りしなければならない南雲さんたちを空港に送り届けたあと、地元ミヤダラメンバーたちが集まって「渾身会(懇親会)」を開いてくれました。橘通から少し入った「寿里庵」で、地鶏っこの炭火焼き、アジの活け作り、メヒカリの唐揚げ、チキン南蛮、豚足の串揚げ、焼酎をいただき、仕上げに別のお店で釜揚げうどんと、宮崎名物をほとんど制覇!よく食べ、飲みました。ほんとに美味しかったです!

皆さんから油津に行くなら、レンタカーで日南海岸を南下して「エビソフトクリーム」「鵜戸神宮」油津駅前通の「えびす」でお昼に「ぎょうどん」と「かつおめし」、「杉村金物店」「飫肥杉の美林」を見て帰ってね!との指令を受け、翌日早速ホテルのフロントでレンタカーを調達。今は、ナビが着いているから迷うことなく目的地へ向かいました。3日目の朝は今にも雨が降り出しそうな曇り空。晴れ女のはずなのにな〜?日南海岸は雨が降ってきてちょっと残念でしたが、道の駅フェニックスに立ち寄って食べた「エビソフト」は「かっぱえびせんとソフトクリームを一緒に食べてるような味」で不思議と美味しかったです。

鵜戸神宮は、海岸沿いの絶壁の中の洞窟の中にあって、観光客の人がたくさんきていました。参道の石段は真ん中がツルツルにすり減っていて、相当昔から参拝に来る方がいらしたのでしょうね。歴史の長さを感じます。鵜戸神宮から油津まで一本道なので迷うこともなく、夢見橋も簡単に発見!天気以外はきわめて順調に来ることができました。

夢見橋のベンチに座って一休みしていると雨降るなか結構たくさんの方が橋を渡りにきていました。ご夫婦やサラリーマン風の人、家族など、車で見に来ている人も。夢見橋が架かる堀川運河のボードデッキに、「おおはし杉ベンチ」発見!周辺の整備が完成したら、もっと素敵なスギダラスポットになるでしょう。しばらく夢見橋のベンチで夢心地に。次は是非夜に来たいですね。

さて、お昼は「えびす」へ。楠ダラさんの指令通り「魚(ぎょ)うどん」と「かつおめし」を食べました!魚うどんは「うどん」のようですが、じつはハモやカワハギなど高級な白身魚でつくったうどんだったんですね。お水で煮てちょっと薄口醤油をさしただけなのに上品なお出汁に。旨みがあって、すごくおいしかったです。おかみさんがメニューにない「カツオコロッケ」や鮮やかな海草の寒天?を出してくれて、思いがけずグルメなお昼になりました。

「えびす」でかなりゆっくりしてしまったので、ヨシダケ先生おすすめの木造三階建ての杉村金物はゆっくり見る時間がなかったのですが、それでも一目だけ見て、北郷経由で帰路につきました。あいにく雨が本降りになってきて、霧に煙って飫肥杉の美林はよく見えなかったのですが、また次の機会の楽しみにとっておきましょう。以上、ちょうど6時間でレンタカーを返却して宮崎空港へ。3日間でしたが、とても充実した視察となりました。ミヤダラをはじめとする宮崎のみなさん、本当にお世話になりありがとうございました。とくに宮崎支部長の海杉さんと、道中スギダラから子育てまで幅広く対談することができ、大変勉強になりました。ぜひまた宮崎に伺いたいと思います。

   
   
   
   
   
   
 
 
  ●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務 http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長 北のスギダラ http://sgicci.exblog.jp/
   
   
   
  Copyright(C) 2005 Gekkan sugi All Rights Reserved