連載

 
あきた杉歳時記/第17回
文/写真 菅原香織
すぎっち@秋田支部長から、旬の秋田の杉直(さんちょく)だよりをお届けします ・・・・
 
  8月上旬、梅雨が明け、秋田にも短い夏がやってきました。東北では青森のねぶた祭を皮切りに県内各地でも花火大会や盆踊りなどが次々と開催されます。私も今年で参加して足かけ16年になる東北3大祭の一つ、「竿燈まつり」のために夏休みのほとんどを充て(職場のみなさま、毎度ご迷惑をおかけしておりますm(_ _)m)、8月3日から6日の4日間、子ども共々思いっきり竿燈まつりを楽しみました。今年は台風のせいで夜の開演が危ぶまれましたが、待機中に雨が降っていても、なぜか入場行進の頃には雨があがるのです。不思議!でもおかげで、今年も「まだまだ若いもんには負けないぞ!」と、囃子方の最年長記録を更新したのでした。(笑)
   
  竿燈まつり   竿燈まつり
  「竿燈まつり」の様子   すぎっちも囃子方に参加!
   
 

それにしても今年は暑かった!竿燈まつり初日は37度!!40度を越えたところからすれば3度も低いけれど、普段ひと夏に30度を超える日が数えるぐらいしかない秋田なので、さすがにぐったり。台風が去ったあとのお盆のころも連日30度を超え、文字通り燃えたぎる夏でした。

さてその竿燈まつりの期間中の4日、5日に、秋田市まちづくり整備室と仲小路振興会の主催で、JR秋田駅前から続く仲小路の道路の一部を車両通行止めにして、歩行者天国が実施されました。約250メートルの歩行者天国に、何カ所か休憩場所を設営するということでしたので、8月1日に完成ほやほやの傘杉縁台を置いてみませんか?と秋田市の担当の後藤さんにお話ししたところ、早速設置してくださることになりました。

この事業は、平成19年度、国交省の「地域資源活用等支援調査に採択された、地域資源を活用した「まちの駅」活動化構想〜歩行者にやさしいみちと共に〜の事業で、秋田市中心部を訪問する人々に、仲小路地区の商店街を中心として地域資源を活用して「歩行者」が楽しめる空間づくりを行い、イベント等がある時に合わせて歩行者のニーズの把握等について調査・検討を行う事業です。(http://www.mlit.go.jp/crd/chisei/g1_3.html)

あきた杉を活用した中心市街地活性化に続き、地域資源として「秋田杉」を活用した傘杉縁台はまさにうってつけ。当初は6mの角材をどうやって現場に搬入すればよいか見当がつかなかったそうですが、仲小路商店街のなかに事務所を持つ住宅資材総合商社の角繁さんのご協力により、(これも地域資源ですね!)無事まちなかに搬入することができました。竿燈もあがり、傘杉縁台のまわりには人がいっぱいでした。(ちなみにこのとき私は、別会場の竿燈妙技会に出場真っ最中で、あいにく取材に行けなかったのです。写真は秋田市のホームページより抜粋させていただきました!)コンクリートとガラスの無機質なビル街に、ほっとするやわらかな居心地を提供する秋田杉のベンチは大変好評だったそうです。
   
  歩行者天国   傘杉縁台
  竿燈まつりの期間中、JR秋田駅前から続く仲小路の道路の一部が歩行者天国に。   「傘杉縁台」も登場しました。
       
 

この社会実験のあと14日・15日に開催された「AKITAカジュアルアーツフェスタ2007」で歩行者天国を実施した際にも、ストリートライブアーツのステージ前に傘杉縁台を設置して、来年度秋田県北秋田市で開催される全国植樹祭の会場に設置される予定のベンチやスギ屋台とともに、そこだけ「スギダラフェスタ」になっていたのでした。(こちらの様子は北のスギダラをご覧ください。)

それにしてもここのところ秋田でも「地域資源活用」「まちづくり」といった言葉をよく見聞きするような気がします。先月の新宿で開催された全国都市再生まちづくり会議でも、いろんなタイプのまちづくりの手法が紹介されていました。地域資源も自然、特産物、景観、歴史ある建物、路面電車、芸術祭、地元出身アーティスト、商店街、イベント、学生の参画など、それぞれが知恵と工夫をこらして取組んでいるのが印象的でした。どの団体も「使命」と「情熱」にあふれたプレゼンテーションでしたが、短い時間とパネル数枚分の宣伝コーナーだけでその「価値」を伝えるのは難しいなと思いました。じっくりお話をすると伝わるのですが...。その点、スギダラ&ミヤダラは展示ブースも見る人を引き付ける魅力があったと思うし、スギコロにメッセージをこめて配付して、見る、聞く、だけでなく触って、匂いを楽しんで、と五感に訴えるものがありました。御承知のように全国都市再生まちづくり会議でスギダラは「まちづくり大賞」をいただきましたが、素晴らしい活動はほかにもたくさんありました。でも何故スギダラが投票によって大賞に選ばれたのか?新宿杉談義でもそのことが話題になりました。いくら素晴らしい価値ある活動でも、伝え方によっては感動や共感は生まれない。新しい価値を発見して自分達だけで喜んでいるだけでなく、その価値がいかに素晴らしいものであるかを分かってもらう努力が必要なんですね。共感を呼ぶ夢をカタチにすること。発見した新しい価値を、最適な媒体をもってカタチづくること。つまり「デザインすること」がスギダラにとってアキレス腱なのではないかと。

今一度杉談義のときとったメモを読み返してみました。

「まちづくりは合意形成の結果。では必然性のあるデザインとは何なのか?」
「いいデザインとは普遍的なモノなのか?最終的アウトプットは地域によって違うのでは?」
「本当にその地域にとって大切なデザインについて考えなければ。」
「ノリは大切、でも必然性のあるデザインとは違うのではないか。」
「価値あるデザインとは、経済的要因が変わっても変わらないデザインなのでは?」
「自分はデザインの本質を見失っていないか。」
「スギダラはもっとデザインをちゃんとやらないと崩壊する」

「スギダラとデザイン」について、いつかまた杉談義をしたいですね。以上の問いかけは、そのときまで宿題にしておきましょう。
   
   
   
   
   
 
 
  ●<すがわら かおり> 教員
秋田公立美術工芸短期大学 産業デザイン学科 勤務 http://www.amcac.ac.jp/
日本全国スギダラケ倶楽部 秋田支部長 北のスギダラ http://sgicci.exblog.jp/
   
   
   
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