連載

 
『東京の杉を考える』/第13話

文/ 萩原 修

あの9坪ハウスの住人がスギダラ東京支部長に。東京から発する杉ものがたり。
 
 
 

東京での活動の必然性

だらだらと続いているこの連載。きっと、スギダラだからこそ、ゆるされているのだろう。
2005年の忘年会の席で、本部からなぜか東京支部長に任命された。それまで、とくにスギダラの活動に積極的に参加していたわけでもないし、杉に深く関わった仕事をしていたわけではない。それでも本部がぼくに期待したのは、多くの建築家やデザイナーとのつきあいがあり、東京でのスギダラの活動を積極的にすすめてくれそうだと期待したからだろう。
結果的に、この1年半を振り返ってみて、たいした活動ができていないことを心苦しく思う。言い訳も反省もスギではないけど、その原因が、いくつかあるのはわかっている。

ひとつは、本部が東京にあるので、その関係の取り方が難しいこと。本部は、本当に強力で、次から次へと日本全国各地で活動し、スギダラの意義とノリを植林している。各地の支部を盛り上げる手腕には、何がなんだかわからないエネルギーを感じる。東京にいてもその熱気が伝わってくる。ぼく自身、なにかと本部に頼ってしまうし、遠慮もある。

もうひとつの原因は、なかなか仲間ができないこと。この1年半でいろいろな人に声をかけてみるものの、スギダラのことを本気で取り組もうというところまで進まない。東京でスギダラのことを本気で取り組むモチベーションがどこにあるのか。正直言って、ぼく自身、まだまだ、東京でのスギダラの意義を模索しているし、のることができないでいる。

現在、東京でのスギダラ活動の方向性は、ふたつ。ひとつは、東京の杉を活用すること。これには、東京の杉の生産者か、組合か、製材所などで、スギダラ活動をいっしょにしたいと言う人と組む必要があるだろう。各地のスギダラの活動を見てみても、杉を仕事にしている人の本気度の違いを感じる。なんとかしたいという強い思いがある。東京の杉がどんな現状で、どんな可能性があるのか。そこのとこが今ひとつわからない。

もうひとつの東京でのスギダラ活動は、日本全国の杉の情報センター的なものをつくること。東京に住む人に、有意義な杉の情報を提供することで、生産者と生活者をつなげていきたいという思いがある。この活動は、本部との連携を密にしていく必要があるだろう。
こちらも、なんとなくは考えているものの、具体的な動きまでにはいたっていない。

杉のことをより意識して生活してきた1年半。自宅のデッキを杉でつくり直してみたり、神田のイベントに杉の屋台を持ち込んでみたり、なぜか鳥取の杉を見に行ってみたりと、本部の力を借りながら動ける範囲で動いてきた。

そろそろ、次の段階に進む時期にきているような気がする。まずは、東京支部の飲み会を開催して、いろいろ意見交換したい。その後は、東京の杉の山にも入ってみたい。
東京のスギダラの活動の必然性さえ見つかれば、あとは自然に進んでいくような気がしている。これからもあせらず、出会いながら、話ながら、考えながら、活動していきたい。

 


 
 

●<はぎわら・しゅう> 9坪ハウス/スミレアオイハウス住人。

 



   
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