連載

 
新・つれづれ杉話 第10回 「花粉症だからこそ」
文/写真 長町美和子
杉について、モノづくりについて、デザインについて、日常の中で感じたモロモロを語るエッセイ。 
 
  今月の一枚

※話の内容に関係なく適当な写真をアップするという身勝手なコーナーです。

うちの近所にある「壁面緑化の家」。どーです、このエコロジカルな佇まい(笑)。毎年緑萌える季節になると、それまで真っ裸だった建物がうわーっと葉っぱに覆われます。下の写真は、その裏側から見たところ。すごいでしょ、隣近所みーんな緑! 緑! 緑! 自転車なんて駐めておいたら一緒に緑化されてしまいそうな勢いです。この家、まさか住んでいないだろうと思っていたのですが、この間、ドアに宅配便の不在配達の紙が挟んでありました。いや、びっくり。

 

 
    花粉症だからこそ
 

 今年はそんなにひどくない、って言ったのにー。天気予報のウソつき! というわけで、もう20ウン年続く花粉症に悩まされる今日この頃。鼻と目を真っ赤にしながら春が行き過ぎるのを待っています。
 名刺にスギダラのホームページアドレスを印刷してから、渡す人ごとにいろんな反応があるけれど、中には「私、杉花粉症ですから……」と引き気味の人もいます。でも、そんな時には「私もそうです」と笑顔を返します。「だからこそ、どんどん積極的に使わないとダメなんですよ」って。
 森づくりキャンペーンを展開している毎日新聞も、最近になってようやく、植えるだけでなく「手入れして使っていく大切さ」に触れるようになりました。そして、自然破壊に対してものすごく敏感な社会派の『通販生活』でも、日本の山のほとんどがアマゾンの熱帯林と違って人工林であること、人工林は適当に間伐しながら活用していくことが大事である、と書くようになりました。自然を保護する=森林はそのまま手を付けずに放っておくのがいちばん、という間違った解釈をする人が少なからずいましたが、ここ数年で、また一段と理解が深まったような気がします。知床の保護樹林とか、屋久島の杉と何もかも一緒にしちゃう人がいるからねー。(そういや、『通販生活』では、島崎信さんがデザインした杉テーブルを大々的に扱っているんですよね。「杉太」とか「大杉」も売り込みましょうか!)
 それで思いついたのですが、杉に関心の集まるこのシーズン、それを逆手にとって、杉材を宣伝するスギダライベントをやったら結構いろんなところで取り上げてくれるかもしれませんね。山においとかないで、バンバン使おうじゃありませんか、って。
 逆手にとる、と言えば、今、あちこちで金属が盗まれているでしょ? ガードレールとか車止めとか。これも「じゃ、杉でつくりましょうよ」って、手すりもガードレールも街路灯もみーんな杉になったら世の中の風景はだいぶ変わると思うんだけどなぁ。
 ……なんて言うと、オマエが率先して売り込め、と言われそう。ミロモックルの関根さん、営業よろしくお願いします。

   
 
 
  <ながまち・みわこ>ライター
1965年横浜生まれ。ムサ美の造形学部でインテリアデザインを専攻。
雑誌編集者を経て97年にライターとして独立。
建築、デザイン、 暮らしの垣根を越えて執筆活動を展開中。
特に日本の風土や暮らしが育んだモノやかたちに興味あり

   
   
   
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