連載

 
小さな杉暦 1月 おまけもあります。) (お知らせもあります。)
文/写真 石田紀佳
あのスギぼっくりからとびだしたスギの種が、再びスギぼっくりを鈴生りに するまでのほんの歩みはじめの記録。
 
 

暖冬だし、東京だし、と小さな植木鉢を外に出したままにして暮れを迎えました。
12月中旬頃からうすうす感じてはいたのですが、見て見ぬふりをしていたのかもしれません。暖冬とはいえ、冷え込む日もあったのですから...。
土が凍るといけないからと、水を控えめに、というよりも日中の水やりをさぼっていたのも悪かったかもしれない・・・。

なんと、ひさしぶりに見た杉苗ちゃんたちは、カラッカラになって色まで変わっていたんです!

それで12月末にあわてて、彼らを部屋に入れることにしました。
あぁ〜虫喰いにも負けずにもちなおして、あんなにやわらかくかわいい黄緑の新芽をつけていたのに。渋い色ともいえますが、この年令にしては半病人みたいな姿。わたしにはほとんど死にかけみたいに見えました。

 

  12月末紅葉 先っぽの芽がしなびているようだが。

 

室内で育てていた3兄弟はまだ緑みどりしているのだから、やはりもうダメなのかと、自責の念にかられて、はあはあと息をふきかけたりしましたが、どうなるのでしょう(子供の頃冬になって動かなくなったカブト虫が息をふきかけるたびにもぞもぞ動き出したのを思い出したのです)。ただの(?)紅葉かもしれないと杉苗と自分を励ましつつ見守っています。ちなみにヒノキたちもうちに入れましたが、彼らはほとんど紅葉していませんでした。(杉苗のことで頭がいっぱいでヒノキの写真を撮るのを忘れていましたが)たしかヒノキのほうが寒さに強いよなあ、とか、秋田は寒いはずなのに杉苗は紅葉してないみたいだけど、などと悶々としながら、8本の杉苗たちとのひとつ屋根の下、杉床の上の暮らしが始まったのです。

 
      とても生後7ヶ月の幼子には見えないが。


 
  07.1月はじめ室内 手前が夏から室内で育てている3兄弟。色が違う。
  しかし、熱い息をふきかけたのが功を奏したのか、杉床の部屋のおかげなのか、杉苗たちはまたもや色をとりもどしてきたのですよ。やったぁあああ!
 
  1月中旬回復 リンとしてきたような気がします。
 
  売れ残り影法師:まったく読者の反応がないまま年を越してしまった。欲しい方は遠慮しないで編集部までどうぞ。


 
 

1月の末、神奈川県の杉ぼっくり定点観測地で焚き火用の杉葉を掻いていたら、杉林から鋪装道路を挟んだ縁に実生の杉苗ちゃんたちが。落ち葉のお布団をかぶってこんな道脇に生きていました。

 
  林床実生杉上から 撮ったあとはまた落ち葉をかぶせておきました。
 
 
  林床実生杉横から このうちで何本が大きくなるのでしょうか。
  林床実生杉太い あの子たちと同じ年頃のはずですが、まだ分岐しておらず、茎も太くて短い。  
 
 
 
 

 

●お知らせ・・・

   
 
 

「藍から青へ 自然の産物と手工芸」建築資料研究社
石田紀佳 著 : 梶原敏英 撮影

インテリア・マガジン「コンフォルト」で連載した記事をまとめた本ができました。
内田みえさんの編集です。
全ページ総天然色で、26種類の素材とともに杉のことも載っています。
人が自然界で素材を発見し、長い年月をかけてどう手をかけてきたか……。
スギダラの活動にも通じる、ものづくりの根源を垣間見られる一冊です。

ある人に「杉から桶へ」ってタイトルではないの? とつっこまれましたが、そ ういうタイトルでもよかったわけですね。
http://www.ksknet.co.jp/book/search_detail.asp?bc=05005016

少しだけ中身をお見せします。


  ●<いしだ・のりか>フリーランスキュレ−タ−
1965年京都生まれ、金沢にて小学2年時まで杉の校舎で杉の机と椅子に触れる。
「人と自然とものづくり」をキーワードに「手仕事」を執筆や展覧会企画などで紹介。
   

   
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