特集飫肥杉

 
飫肥杉が造船材に適した理由
文・写真/岡本武憲
 
 

 
 

飫肥杉
 

 日南(旧飫肥藩)にはどうして杉ばっかり植えてあるのだろう?
播州の奥地で育った私にとって、はじめて日南に来たときの素朴な疑問でした。
その後、歴史を調べてみると、飫肥杉の特性が造船材として最適であり、飫肥藩の政策として計画的な植林を行ったことが、現在の風景を産みだす元となったことはわかりました。
そこで、飫肥杉の特性について、最初に詳しく書いた文章はどれなのか、調べてみました。
その結果、塩谷勉・鷲尾良司の『飫肥林業発達史』が最も体系的に、かつ総合的に飫肥杉の分析を行っていることがわかりました。その先輩の労作から、飫肥杉の特性を引用させていただきます。

【塩谷勉・鷲尾良司の『飫肥林業発達史』(服部林産研シリーズbQ)1965.6】から引用
飫肥杉の特性を基礎に造船業と結びついて発展した飫肥林業(P.116)
(前略)1916年(大正5年)に山林技師の比留間重次郎が行った飫肥杉材強弱試験による特性を用途との関係でみると次のとおりである。
1)抗圧強が小さい。(飫肥杉263s/cu、青梅杉575s/cu、尾鷲杉472s/cu)   したがって柱、杭その他木材など縦圧を受けるものには不適である。
2)弾圧係数は小さいが、破壊負担強は比較的大きい。(飫肥杉34,124s/cu、吉野杉99,221s/cu、尾鷲杉34,124s/cu)したがって弾性を要する梁材、桁材などの応用は不適であるが、強靱性にとんでいるので、船体の敷(底板)および棚板(側板)などのように、他物に衝突して破損のおそれが多く、しかも一定の形に湾曲して使用するものに適していた。
3)比重が著しく小さい。(飫肥杉36.3、吉野杉47.3、尾鷲杉48.0)したがって浮力の大きいことを望む船材としてはもっとも適していた。
飫肥杉は以上のような試験的性質以外に次のような特性を兼ね備えていた。
1)樹脂にとんでいる。したがって水を吸収することが少なく、水切りもよく、また長く腐朽しない。
2)弾力性にとんでいる。したがって釘を打ってもそのあとがすぐにふさがり浸水を防ぐ。
3)偽年輪が多い。多いものになると11におよぶものもあり、少ないものでも5〜6の偽年輪をもっている。それが材質を緻密にして強靱性を高めている。
4)粘着力にとむ。したがって容易に節抜けするということがない。

 

油津港全景(昭和初期)

 

以下飫肥杉関連の写真、及び文献を紹介します。

●→飫肥杉の歴史写真集
●→飫肥杉関連文献

 




  ●<おかもと・たけのり>日南市教育委員会 生涯学習課 課長補佐兼文化係長(文化財担当)

 
 
   
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