杉は水が好き、といわれているので、この季節、水やりだけは欠かさずにしています。なんといってもこの小さくてまだやわらかい体には夏の暑さは酷でしょ
う。なのでちょっと日陰においたりしています。まだ肥料は何も入れていないのですが、たまに米のとぎ汁まじりの水をあげたりするので、少しは養分になっているかもしれません。
こうして杉の子たちは小さな鉢の中で枯れることなく、全員それぞれマイペースで育っています。マイペースというのは、とっとと分岐した杉の子もあれば、まだ分岐しない杉の子もいるからです。
いずれにしても育ちざかりの彼らにとって、素焼きの鉢は狭くなってきました。 そろそろ間引きをしなくてはいけないのですが、しかし、こういう小さいときに何を基準に取捨選択したらいいのか? 人生経験の足りない私にはたいへんに難しい問題です。単純に考えて大器晩成ということばが浮かびますし、まだまだこ
の先、何があるかわからないので、うかつに一本にしぼることもできません。
どうしよう・・・
悩んでいるうちに夏も終わりに近づいて、いよいよ隣の杉の子同志の葉っぱがふ れあうくらいに育ってきました。そんな悩ましい夏のある日、わたしは宮崎県日南市で「飫肥杉の一生」という8mm映画を見たのです。そこには挿し木による苗づくりの様子が映されていました。たしかに一定の品質を保つには挿し木がいいのでしょう。でもわたしが育てようとしているのは実生の杉なので、へんに意識しないで、偶然にまかせるのがいいな、と思いました。そろえる、ということも必要だけど、そろわない、ということも大切ですよね。
そうして、映画を見て東京に帰った翌日に、「間伐」を決行したのでした。
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