祝!『森tebaco』ウッドデザイン賞 農林水産大臣賞受賞!
 

森tebacoから学んだものづくり

文/ 奥 ひろ子

   
 
 
   
 

ウッドデザイン賞2023 農林水産大臣賞の受賞にあたり、プロジェクトに関わってくださったみなさま、応援いただいたみなさま、ありがとうございました。 「森tebaco」は、川本園の利用者さんの個性・得意を活かし、やりがいがもてる仕事になるのかを問い続け、プロジェクトメンバーみんなの思いがひとつの形になりました。

   
  ●確かな技術と丁寧な仕事
  幸仁会「川本園」に初めて訪問したのは、プロジェクトのお話を伺ってから数週間後。
埼玉中央部森林組合から認証林の原木を仕入れ、丸太から製材、乾燥、集成材まで加工できる充実した機械・設備を持つ作業棟は、整理整頓され、利用者さんが作業しやすいように工夫がありました。また、これまでに製作された木製品を拝見すると、丁寧かつきれいな仕事で、ここは何でも製作できるのではと、確かな技術力に驚きました。
   
 
 
     
 
 
     
   
  ●森のめぐみを活かし、しごとをつくる魅力ある地域製品
  木育・木づかいネットの浅田先生・多田さんからは、商品づくりあたって、下記のお話がありました。
 ○川本園の特色を活かし、デザイン性・ストーリー性を大切にした商品企画・デザイン
 ○川本園をモデルケースとして、日本セルプセンターの木工部会を中心に他の作業所でも展開したい
プロジェクトメンバーで商品企画案を出し合う中で、川本園で以前からイベント等の記念品として需要が高い製品(時計、額縁等)をリニューアルすることにしました。
   
   
  ●仕上がりきれいな試作、だけれども。。。
  完成しましたと送っていただいた試作は、ひのき材もきれい、仕上がりもきれい、丁寧な仕事が伝わるものでした。
凄いなと感心していたのも束の間、これは製作が難しいとの連絡が。。。
全体的に部材が細かく、加工のときに手元が危ない、材の厚みは15mmは欲しい、角の固定が難しい等々、利用者さんの仕事に出来る部分が少ないとの課題が浮き彫りになりました。
コロナ禍もあって、対面での打合せが厳しく、モノづくりをWEB会議で進める状況でした。本来であれば、出来る、出来ない、この方法なら出来る、といった話を類似する手法やサンプルなどを見ながら細かく確認し、完成イメージを共有しながら、デザインを調整します。
画面越しに、川本園のスタッフの神塚さん・野辺さんから課題点を丁寧にご説明いただくのですが、先日の訪問で見たあの製品は出来ていて、なぜこれができないのか?安全面??技術的???作業工程????コスト?????、何がどの程度、難しいのかをなかなか掴むことができず、初めてのチームでWEB会議でモノづくりを進める難しさも痛感しました。
   
 
 
     
   
  ●答えが出せるのか。。。
  わからなくなった私は、2次試作については、A・B・Cの3パターンを出しました。
内田洋行の山田くんに相談しながら、
 ○組立てるパーツを極力減らす。
 ○組み立ては、面同士にすることで接着面を増やし、固定が安定するように。
 ○NC加工機を活用して、加工の安全性にも考慮する。
 ○材として、ヒノキのきれいさが引き出されているから、そのままの質感を活かしたい。
 ○面取り作業は利用者さんのお好みで、すべすべになるまで楽しんで! 
という思いだけを込めました。
また、NC加工を行うことで、他の作業所さんへ展開するにはハードルが出ることは感じていました。ただ、パーツを川本園から提供するなど方法はあるだろうと勝手な枠組みを考え、まずは、出来るのか出来ないのかを伺いたいと。
なんの確信も持てないまま、あとは委ねるしかないという気持ちでいました。
   
   
  ●出来てる!
  再び、完成した試作は、今回も丁寧に仕上げられていました。
すべすべに磨き上げられたヒノキは、手に納まるサイズながらボリューム感があり、香りや木目のきれいさ、あたたかさが伝わってきます。
目標だった利用者さんの仕事になるかは、神塚さん・野辺さんのご尽力で、作業者さんの個性に合わせ作業工程を工夫いただき、全ての工程に利用者さんが関われるとのこと。この試作をベースに製品として完成度を上げていける、と先が見えたことに、とてもとてもホッとしました。
製作の調整を加えつつ、さらに、パワープレイスの森さんが、私たちの思いに沿ったイラストを描いてくれて、時計やカレンダーを彩ります。また、グラムデザインの赤池さんが大切なものを入れた「玉手箱」をイメージした素敵な名前「森tebaco」とつけてくださいました。
   
 
   
   
  思いある人々とのつながり、学びが多いこのプロジェクトに参加させていただき、ありがとうございました。
今回の受賞は驚きましたが、このチームで作り上げたモノ・コトを評価していただけたのは嬉しかったです。
たくさんの思いが詰まったプロジェクトはこれからも続きます。
応援のほど、どうぞよろしくお願いいたします!
   
   
   
  ●<おく・ひろこ>  パワープレイス株式会社
   
 
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