この事業の共同実施者となった我々木育・木づかいネットは、「みんな、がんばって!!」と応援する旗振り役。とにかく頑張ってくださるのはデザイナーさん、そして川本園のスタッフさん、そしてなんといっても利用者さんです。コロナ禍の折、対面での打ち合わせもままならず、ほぼほぼオンラインで進められました。
本来なら何度も顔を突き合わせて、作れるものと作りたいものとの溝を埋めていくのですが、まだオンラインにも慣れない頃。一度、プロジェクトメンバーで川本園を訪れ、顔合わせと施設の作業風景を見学ができた他は、お互いのやり方、性格などもわからないまま手探りで進められたのです。
また、新しいものを作るということは余分な仕事が増えるということ。みんな、いつもの仕事にプラスで動かなければならず、それなりに不満や不安も膨らんでいたと思います。
その不満をワイワイと集い(飲みながら)解消する機会が作れなかったのが、私的には痛手でした。
それでも図面は上がり、試作も上がる。送られてきたのはうなるほどのきれいな仕上がりの試作でした。まずは川本園のスタッフ、神塚さんが力の限り作ってくださったのです。試作なのだから、作りよいように若干の変更を加えながら作っていただいてもかまわなかったらしいのですが、そこは職人魂に火がついて、見事にデザイン図面に忠実な作品が。
しかしそこで課題も持ち上がっていました。「このデザインを形にするには、職員が多く介在しなければならないし、利用者さんにやってもらうには危険作業が多い」と。
福祉作業所では新しい素敵なデザインを欲しているのだと思ってはいましたが、そこに、利用者さんの仕事がたくさんあること、そして安全に作れることが必須です。試作を作ることで、その基準があぶり出されて来て、私たちには目からウロコの思いでした。
そこからデザイナーの奥ちゃんこと奥ひろ子さんは、基準をクリアするために3種類の方向性でデザインを作り直してくれました。そしてまた生まれるハイクオリティな試作。この時はみんなで川本園を訪れ、意見を述べ合うことができました。意見がまとまらなくなってきたころには、浅田先生が陰になり日向になり、調整役になってくれました。そこから方向性を固めて、調整を重ね、この有機的なかわいらしいフォルムがぽこんと出来上がってきたのです。利用者さんにもたくさん参加いただける製品となりました。
時計やカレンダーのイラストを、スギダラでもおなじみ森麻衣子さんが担当して下さり、赤池さんがこの「森tebaco」という名前を考えてくれました。まさにみんなが関わってできた愛おしい手箱です。
そして製品は完成を見たのですが、本格的な販売はこれから。現在は「日本の森の木づかいショップ」でプレ販売を行っています。
そんな中、この程のウッドデザイン賞2023最優秀賞「農林水産大臣賞」の受賞とあって、うれしい驚きでした。審査委員の益田氏から「最初に見た時に驚きました。木、そのまま。角も全部丸くて。かつてない製品だと思った。〜(益田氏は)ユニバーサルデザインが専門なんですが、こんなに明るいデザインは久しぶりに見ました」と、森tebacoらしい評をいただいたのも嬉しかったです。
この受賞に勢いをつけて、世の中に出して行かねばと思っているところです。いや、早くやれ、自分。
この原稿を書くにあたり、昔の委員会のメモを紐解きました。そこで述べられていた、田中理事長の言葉がこの事業の基本です。
「利用者は全員地域の中で生活をしている人ばかり。どう援助していくか、そのための木材加工であり、木にこだわりすぎているわけでもない。方向転換もやりやすいのが福祉施設の仕事。利益=利用者の工賃アップということで、このことを大前提に考えていきたい。お金の話をすると「福祉の仕事で儲けるなんて」と嫌な顔をされがちだが、結果的に売り上げが上がることが、利用者の幸せにつながる。明日もまた川本園に来てもらうために、来たいと思ってもらうために、環境を整えている」。
まさにまさに、この思いから外れないように、この先もプロジェクトを続けていきます。みなさま、どうぞ応援よろしくお願いします。
プロジェクト発足からあっという間の3年間。やっとみなさんと飲み語る機会も作れました。川本園チームの面白さは、また格別です。受賞の打ち上げを、そのうち熊谷近辺で開催しましょう!!
最後になりますが、このプロジェクトに関わってくださったみなさま、今回のウッドデザイン賞2023の最優秀賞受賞に当たり、わがことのように喜んでくださった応援者のみなさまに厚く、熱くお礼申し上げます。ありがとうございました!! |