スギダラツアー2019 in 山形
 

明るく楽しく元気よく

文/長町 美和子

   
 
   
 

実に久々のスギダラツアー参加でした。
その10日前に母親の葬儀を済ませたばかりで、なんとなくまだ現実の世界に戻りきれていなかった私ですが、あの刺激的な2日間で見事に復帰することができました。

マイクロバスの中で自己紹介をした際、「会員ナンバー2番、杉の小町です」で静かなどよめきが起きましたが、スギダラ発足当時(まだだったのか?)の高知ツアーは参加者4人だけ! 現在の賑わいからは想像もできませんが、それはそれでディープなものでした。

   
  *2004年3月「高知魚梁瀬杉スギダラツアー」実施。南雲、若杉、長町、中尾の現本部有志で高知魚梁瀬とミロモックル産業の視察。この頃、日本全国スギダラケ倶楽部の発足を現在の本部メンバーで語り合う。(千代田さん作成「スギダラ歴史年表」)
   
 

あれから15年、若杉さんが設計に携わった建築を訪問することになるとは!
「高畠町立図書館」も「もっくる」も、愛と勇気に溢れてました。特にまっさらな敷地から新たに立ち上げた図書館の方は、杉をふんだんに使いながらもシュッとしたラインとフォルムが貫かれているあたりに若杉さんらしさが出ていて、感慨深いものがありました。

この「図書館」と「もっくる」を若杉さんが手がけるきっかけになったのが高畠町の地域活性化を意識して始められた「熱中小学校」の取り組みだったというのは聞いていましたが、その折、講師として若杉先生が担当した授業があろうことか「道徳」だったというところが笑えます。きっと熱く、暑く、語ったんでしょうね。

杉のよさに改めて気づき、杉が日本にもたらした文化を知って、自分たちが杉のファンになることで、共感してくれる仲間を増やしていったスギダラの初期の頃。それが今や、一般の方にスッと話が通じるほどに国産材活用への意識が広まってきました。「いや、まだまだですよ」と、もどかしく思っている方も多いことでしょうけれど、30年前に住宅取材を始めた頃と比べたら、ユーザーの理解は格段に進んできています。高畠町の「図書館」と「もっくる」をはじめ、公共の場で杉の空間の心地よさを体験することも、杉ファンを増やす地道な一歩。そうした下地があってこそ、林業や流通システムを取り巻くさまざまな課題にも関心が寄せられるようになっていくんだと思うのです。

ツアーを企画・実行してくださったパワープレイスの若者たちの笑顔を見ていると、日本の未来は明るいな、と思えてきます。難しいことを真正面から難しく捉えるんじゃなくて、明るく楽しく元気よく、のスギダラ精神が脈々と伝えられていっていることに喜びを感じます。こうやって世代は交代していくんだなぁ! ありがとう! あーなんだかしみじみと遺書のような感想文になってしまいました(笑)

   
 
   
   
   
   
 

●<ながまち・みわこ> ライター
1965年横浜生まれ。ムサ美の造形学部でインテリアデザインを専攻。
雑誌編集者を経て97年にライターとして独立。
建築、デザイン、 暮らしの垣根を越えて執筆活動を展開中。
特に日本の風土や暮らしが育んだモノやかたちに興味あり。
著書に 『鯨尺の法則』 『欲しかったモノ』 『天の虫 天の糸』(いずれもラトルズ刊)がある。
『つれづれ杉話』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_komachi.htm
『新・つれづれ杉話』web単行本:http://www.m-sugi.com/books/books_komachi2.htm
恥ずかしながら、ブログをはじめてみました。http://tarazou-zakuro.seesaa.net/

   
 
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