ATELIER MUJI有楽町『木を見て森を見る!』展(前編)
  「コイヤ」の挑戦

文 / 石田達也

   
 
 

 なんでオイラはここにいるんだろう?10月13日(土)に無印良品の有楽町店の2階のアトリエMUJIでオイラは朝から床張りの準備のため垂木を木ネジで留めていた… 2018年10月12日(金)から12月2日(日)まで、有楽町の無印良品2FのアトリエMUJIで開催された「木を見て森を見る展」は、コイヤの発足記念として、お客さんと一緒にワークショップで作り上げたコイヤ製品の一部を制作・展示した。

 実は、ここに行きつくまでは数年がかりのオイラたちの「魂の旅」があった…
 2018年の5月…気が付けばオイラは新川の内田洋行のオフィス・ビルの会議室で気が付いたらオイラは会議の進行役をしていた…

 思い起こせば2年前、近所で仲良しの(決して怪しい関係ではないが)飲み友達の木材流通業の社長から相談があった。「消費税が上がって、東京オリムピックが終わったらよぉ、新築住宅の着工件数とかガタ落ちしてよう、俺たちの業界には未来がないんだよねぇ…。木材に付加価値とかつけてブランド力をつけるにはどうしたらいいだろうか知恵をかしてくれないか?」と飲んだ時の勢いで「よし!おいらに任せろ!」と豪語したのが運の尽きだった…
 それからその会社のスタッフとのワークショップが始まった。何が売れるだろう?売れるためにはどうしたらいいだろう?売れるものを作るには誰に相談すればいいだろうというワークショップの中で、我らがダメ人間の見本であるジゴンス大将の若杉親分を訪ねると、「あんたらみたいな想いを持ってる奴らは日本中にはたくさんいるばい。そんな奴らと先ずは会ってみらんね!」ということになり、2017年の秋に函館に行くことになる。函館の大沼では、木の違った方々とたくさんお会いして盛り上がり、ラッキーピエロのハンバーガーを食ったせいか、一緒に何かやりましょうという話になってしまう。じゃあ次は鹿沼の変態と会ってきなさいということで、鹿沼に出かける。鹿沼にはおかまバーで女装してジディ・ウォングの「魅せられて」を熱唱した社長しか知らなかったのだけど、そこでも熱き想いを持った人々と出会い、何か一緒にできたらねという気持ちを共有する。
 極めつけは気仙沼にGパンを杉で創るというとんでもない話をみんなで聞きに行き刺激を受ける…大沼、小沼、鹿沼、気仙沼とオイラは知らず知らずの間に、もう絶対抜けられない「泥沼」に入り込んでいた…いつの間にかオイラは「コイヤ」の事務局になっていたのであった。

 日本では、地方で一生懸命山を守って造林・伐採してまた植林をしていくという取り組みが、エネルギー政策の転換と共に崩れ、また、外材やRCの台頭により国産材の利用は昭和40年代以降大きく減少の一途をたどってきた。国内の林業・木材業は、最近ではオリンピックの開発やバイオマス事業で息を吹き返しつつあるが、消費増税やオリムピック以降の景気の低迷、何より少子化による住宅着工件数の減速など将来に対して危機感を抱いている者が多い。1立方メートル当たりの国産杉材は、バブル時代と比較しても数分の一程度の価格で低迷しており、今後、需要が一層減っていくならば、業界自体も、10年20年単位で見たときに果たして生き残っていけるのだろうかという不安を抱えていました。

 そんな悩みを持つ業界の中で「コイヤ協議会」(以下「コイヤ」と記す)は平成30年5月18日(5月18日=コイヤ)に発足しました。コンセプトは「産地と消費者をつなぐ」というものです。日本の多くの生活は豊かになり、家具や雑貨は海外からの輸入で安くていいものが手に入るようになり、ネットで注文、配送料無料でどんなものでも送られてくる時代になった。

こんな便利なだけの世の中、果たしてそれだけでいいのだろうか?便利になった代わりに大切な何かを失ってきたのではないか?と考えている木材事業者をはじめプロダクトデザイナー、塗料メーカー、家具メーカーやNPOが次々と集まってきた。
泥沼に入った人たちの集合体の「コイヤ」は、地域の自然や風景を守り、未来に伝えていくために活動を開始した。地域の大切な資源を用いて、地域で作り、地域で使い、地域で育んでいく合理的で感じのいいものづくりをすることで、国産材の価値と収益性を高め、地域に還元できないかと考え、その実現に向けて、産地と消費者という関係ではなく、産地・作り手・使い手が「木」で繋がる仕組みをビジネスとして展開できないかという発想が生まれのだ。

 北欧の家具メーカー等との取り組みとは全く逆の発想から「コイヤ」と命名し、いっしょに仲間になろうという「来い!」、そして使い手が地域を好きになって「恋」をする、内容と関係者が「濃い」という親父ギャグ的なネーミングとなってしまったのは言い出しっぺのジゴンス親分。気が付いたら泥沼に浮かぶ小さな船に多くの人たちが乗り込んできた。
 具体的には、東京を中心に活躍するデザイナーたちがデザインしたものを、地方の事業者が半製品状態で制作、提供し、購入した人たちが作り手と使い手になる製品を中心に販売していこうというもので、ベッドや棚、机や椅子、キッチンなどをキット化して販売を行うビジネスをベースに、ワークショップ等の指導による木育活動、また最終的には使い手と産地の交流から家づくりまで広げていこうという壮大な計画なのだ。
 また、このプロジェクトは、地産地消をベースとしており、例えばキッチンなどは北海道でデザインして製品化し販売を単独で行っていたところを、九州からの発注があれば、高い輸送コストを払って届けるのではなく、デザインをコイヤのグループで共有することで、九州地域の事業者が地元の素材を使い販売する仕組みを考えています。この仕組みにより、輸送コストを削減するだけでなく、輸送に関わるCO2の削減、素材の地産地消を促進することに繋がり、そして、安くなったコストの一部は、オリジナルデザインを開発した事業者に支払うという仕組みが特徴的だと勝手にオイラハ思っている。
 また、地域の素材を使い、地域の技術力を高め、良いデザインを供給することで、消費者ではなく使い手を育て、地域と使い手が繋がっていけるような関係性を作り上げることを目指すのだ。

発足当初は家具が中心だけど、将来的には住宅までラインナップに加えるような計画を目指している。現段階は発足記念としての展示会だけですが、平成31年(2019年)4月からはネット販売をベースとした商品の販売を鋭意準備しております。
 現在「コイヤ」のメンバーは8道府県の22事業者(個人・団体を含む)ですが、今後はやる気のある事業者や地域を増やしていく予定である。コイヤの取り組みが、日本の新しいサプライチェーンとして広がっていけるのか?応援だけでなく、作り手、使い手として是非参加していただきたいと思います!

   
  コイヤのコンセプト図
 
  詳しくはコイヤのホームページをご参照ください。
   
  コイヤ商品の一例
 
   
  コイヤのロゴ
 
   
   
   
   
 

●<いしだ・たつや> コイヤ協議会事務局・ NPO法人 宮崎文化本舗事務局 代表理事

   
 
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