やがて風景になるものづくり。ようび再始動!
  プロジェクトを振り返って

文 / 与語一哉

   
 
   
 

2018年5月5日。青い空の下、再建されたようび本社にようびのメンバーとツギテプロジェクトに関わったメンバー一同がドレスコードの黄色を添えてオープニングパーティーに集まった。笑顔があふれたその光景はそれまでの激動が全て報われた瞬間だった。この機会にプロジェクトの一連を振り返ってみたい。

   
 
   
 

火事から半年後の2016年8月に私はようびに入社した。大学の同級生でもあり、ようび建築設計室室長の大島奈緒子から失った工房を木造で再建したいという思いを聞いて、ぜひその壮大な夢を一緒に追いかけ、実現したいと思ったのがきっかけである。
2017年の年明けにようびは「5500本の木で再建する」とプレスリリースをした。世の中に作ると宣言してしまった以上、引くに引けない、やるしかないという状況になった。
この再建工事の特徴は設計も施工もようびでやることであった。
準備をしていく中で第一ネックは5500本をどうやって加工していくかであった。
プレカット業者は普段の住宅とは異なる物量と加工に困惑していた。そもそも西粟倉村材を含む美作地域の杉材を利用しているのに、それをまた県外に加工を出すのもなんかしっくりこない。そこで私達ようびは、「自分たちでやろう、そして一緒に作ってくれる人(ツギテのミカタ)を集めよう」となった。ツギテプロジェクトのスタートである。
6月よりようび家具工房の渡辺と斉藤をメインにここから2ヶ月かけて5500本の構造材の加工を進めていった。1日100本加工のノルマが課せられるわけであるが、ここでツギテノミカタの多大なる力が後押ししてくださった。

   
 
   
 

そんな加工をしている最中、私は建築確認申請と闘っていた。この申請が下りなければ着工できないので、着工できなけれ加工している材料はもちろん、何もかも無駄になるというプレッシャーがかかっていた。
やっとの思いで確認申請が下りたのが10月上旬。(実は一番ほっとした瞬間かもしれない)
ようやく着工できるようになった。ここから遅れを取り戻すべく現場にはようびメンバーが入るようになる。基礎工事も防湿シート敷きや断熱材敷きなど自分たちでできることはなんでもやった。
基礎工事が終わった11月の3週目には、加工した木材が現場に入り、ようやくこの時が来たというワクワクとちゃんと組みあがるだろうかとういう不安が一気に押し寄せてきた。
11月20日の組み立て第1日目、ようびフルメンバーが揃い、大工の竜太さんと田上さん、ユニックの操縦には村内で製材業をされている岸本さんと一緒に組み立てていった。
基本的には材料を地面で組み、壁や梁をパネル化したものをユニックで吊り上げていく、そういった組み立て方法をとった。何度もシミュレーションをしたが、ちゃんと組みあがるかどうかは組んでみないと分からない部分があったので、最初の壁パネルと梁パネルが組みあがった時は何とも言えない安心感がこみ上げてきた。

   
 
   
 

ここから2ヶ月以上掛矢を振り続ける日々が続いた。
現場での組み立てにもツギテノミカタに入ってもらい、誰が現場に入っても精度が統一できるよう治具を作成し、材料を運ぶ、掛矢で叩く、ビスを打つといった作業をより単純化させた。またこのプロジェクトの中でよく見られた光景として、ツギテのミカタが他のツギテノミカタを指導する場面だ。ミカタの皆さんには私達の行き届かない部分をたくさんフォローしていただいた。1日多い日には20人を超え、毎日色んな方に来ていただいた。

   
 
   
 

年末から年始にかけて一番恐れていた雪が降り始め、構造材に積もった雪を振り払いながらの作業、顔に突き刺さるような横殴りの雪、なんとしても前に進みたいという一心が体を動かしていった。
正直に言うと建築を専門としてやってる人にとっては無謀といえるスケジュールだった。3月末に竣工が当初より決まっていたが、「無理じゃないか」という声はよく聞こえた。正直自分の中にも「難しい」という思いはずっとあった。しかしそんな中でようびメンバーからは一言も「無理」「出来ない」という言葉を聞くことはなく、又来てくださるツギテノミカタの方々にも完成に向けて後押ししてくださったのが、最後まで諦めることなく走り続けることができた要因だと思っている。本当にとても心強いと心から思った。
雪も溶け、春の気候を感じることが出来るようになった3月の末、いくつかの難所を超えて、建物は完成した。

ツギテプロジェクトを通じて未来を想像するワクワクを仲間とツギテノミカタと共有できた感覚は自分の心に深く刻まれている。
ツギテプロジェクトで実際に作業に参加してくださった方々、色んな形で応援してくださった方々皆さんに心よりお礼申し上げます。

   
   
   
   
  ●<よご・かずや> ようび

   
 
Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved