隔月連載
  にっぽん飫肥杉仮面ばなし/第8話「いいスギ帽子」

文/イラスト 河野健一

   
 
 
 

おじいさんが「山で芝刈り」と称してゴルフをしていた頃、おばあさんは川で洗濯をしていました。大量の洗濯物を前に「あぁあぁ〜、おわんない!おわんない!」とぶつぶつ愚痴っていると、川上のほうから、おわんがぷかぷか流れてきました。驚いたおばあさんは「おわんない!おわんある!おわんない!おわんある!」などとパニック気味。

よーく見ると、おわんの中で何かが動いています。なんと、まあ、親指ほどの男の子が、スギのお箸を使って、おわんの舟を器用に漕いでいました。おわんも、どうやらスギで出来ていて、その男の子は、とても素敵な帽子をかぶっています。な、な、なんと、その帽子もスギで作っているみたい。

おばあさんは、男の子に声をかけました。「あんた、いいスギ帽子だねっ!」すると、男の子は、おばあさんに向かって「いいね!」ボタンのように親指を立てました。近くで洗濯をしていた近所のおばあさん達は「あの小さな男の子は『いいスギ帽子』君っていうのね」と思い、ニコニコしていました。

とても小さな男の子でしたが、とっても大きく見えました。堂々と胸を張り、威勢よく立てた親指。何か明確な目的を持ち、何が何でもやり遂げるぞという意思が、小さな体のすべての小さな毛穴から噴き出しています。

この時代、おわんや箸は、スギなどの近所の木材で、近所の職人が作っていました。1個1個ていねいに手作りで。だから、大量に作ることは出来ません。ボロ儲けすることは出来ません。

そもそも、ボロ儲けしたいなんて思ってもいません。使ってくれる人のことを思い、ココロを込めて、コツコツと作ります。作ってくれている汗も表情も、ご近所さんだから見ることができます。職人も、どこの誰が、どんな風に使ってくれているのか知っています。

大きな隣町で、職人とは呼べない集団が大量に作り、そっちのほうが安いと知っていても、近所で買います。どんな誰が作ったモノか分かりますから。少し多く負担してでも、近所の仲間で繋がって、支え合って生きてます。

でも、あの、いいスギ帽子は、きっと家族の手作りです。売っているのを見たことがありませんから。愛情たっぷりで育て、成長した我が子の意志・情熱を尊重し、涙をこらえて人生の旅へと送り出したのでしょう。送り出すと決めたので、悲しい顔などせずに、見えなくなるまで大きく大きく手を振り続けたのでしょう。

あっ!
仮面を着けていたことにさせてください!(笑)

それと、もう1つ。
第8話になっても、文体や路線が定まっていなくて、どうもスギマセン…。

   
 
   
   
   
   
  ●<かわの・けんいち> 日南市役所 広報担当 / 日南市 飫肥杉課OB / スギダラ飫肥支部 広報宣伝部長・会員番号441
   
 
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