特集  『木とくらす』 - はたらく、まなぶ -  【良品計画 x 内田洋行】
  内田洋行と無印良品と杉とものづくり

文 / 小山裕介

   
 
 
 
  はじまり
 

先日、内田洋行・パワープレイスと共同で行った『木とくらす』 - はたらく、まなぶ -展示会が無事終わりました。今回の企画にご来社いただいた皆様、関わっていただいた皆様に厚く御礼申し上げます。
わからないことだらけで始まった今回の内田洋行と良品計画の協業プロジェクト。
普段の開発と全然違う手探りの開発、コミュニケーション、社風の違いなど壁はたくさんありましたが、国産材・地域材をなんとかしたい!といったメンバー共通の思いでようやくひと段落を迎えられたと思い、そんな一風変わったプロジェクトに参加できた事に喜びを感じています。
ただ、本企画は始まったばかりなので、これから先はお客様に伝え、関わったみんなが喜べるよう成果を出していきたいと思います。

始まりは、2015年の年明けごろに先輩であり上司である方からちょっと手伝ってくれとお願いされたのがスタートでした。国産材を使ってオフィスを作り法人の窓口を作っていきたいんだ、そのPJTをデザイン面で手伝ってくれと、部門が変わってからは、よほどのことがないとこんな相談はされませんでしたので、その上司がわざわざ声かけてくれることが嬉しくてついふたつ返事で回答し今回のプロジェクトに参加しました。
思えば、私は良品計画に入社してから家具、おもちゃ、そして少し家電と日本各地の郷土玩具を集めてお正月に売る「福缶」といった広範囲のデザインを担当してきました。その過程でさまざまなデザインを考え、つくられる現場を見るにつれ、日本の生産地の疲弊が気になり始めました。同時に海外で安くものづくりをするという事に対して、いつか先が詰まってしまうだろうと漠然と思っており、地産地消ではないですが、今後は国内で良いものを知恵と工夫で適正な価格にして販売していくという世界を広げていかないと感じていました。
そういったことをぼんやりと考えていた矢先だったので、ぜひやらせてください、と即座に返答したのだと思います。

   
 
  林野プロジェクトで視察した宮崎の山
   
 
  基本の木本
 

共同開発を進める中、結果的に良かったことの一つとして、林野庁プロジェクトがあります。
これは、ある日林野庁から補助金がもらえそうだ〜と寺田さんだったと思うのですが報告がありました。普段補助金といったことに接しない無印チームはよくわからないながら、お互い予算のない中でやりくりして開発を進めていたので、渡りに船と思って皆で喜びました。
ただ、よくよく調べていくとその補助金は私たちの開発には使えませんでした。一企業に加担するような補助金の使い方はできないようで、まぁそれはそうですよね、世の中そんなに甘くない。その通りかなと思いつつ、、、、、、、なんども本当に使えないんですか?とか、やっぱり返せないんですかね?と相談しながら、開発で悶々として、補助金の使い道に悶々とする日々がありました。

 
 
 
突破口は、若杉さんから、「折角お金あるんだから木材をよく知ってもらう本、基本の木本つくろうぜ〜」といつものダジャレが始まり、私たちが売っていく商品を私たちももっと知って、販売する人、購入する人に伝え、杉のこと、地域のことを日本中で考えていけるツールに使おう話が進みました。特に無印良品では針葉樹を使用することが少なく、特に杉の商品は今までに少ししかありませんので、産地に入り込み、取材することで、問題点をチーム内で共有化することができました。 地域は宮崎を中心とした、九州が舞台になりましたが、地域の現状、森や木に対する思いなど学ぶ事ができ、木の特性をうまく伝えられていると思います。最終的にはキャナルシティ博多の無印良品の店舗で展示を行い、九州の杉や杉を使ったものづくりの紹介を行い様々な方に知ってもらえたと思います。
   
 
  宮崎の木とはたらく人を紹介した木本
   
 
  ウチムジ
  林野庁プロジェクトと並行しながら毎週のように打ち合わせを重ね、商品開発を行っていたのですが、想像通りなかなか進みません。メンバー全員が揃うことも少ない中、基本的にはオフィスのことなので、実績のある内田洋行チームがデザインを描き、私たちがこうしては?とかこんなことできますか?といったやりとりで進めていました。普段は無印良品のフィロソフィーの中でデザインを考えるのですが、(これがまた難しいです、、、いつも無印らしさとはなんだろう?と悩みながら開発しています。)それに協業というポイントが入ってくるのでなかなかゴールが見えません。脚一つとっても、私たちがこれは普通で単純で良いと思う事が、片側ではどこにもありすぎてつまらない。シリーズの統一感一つとってもお互いに見ているポイントが全然違う。などなど、お互いにデザインを少しずつ擦り合わせしながら、仕様を決めていきました。
最終的には量産されている角パイプを軸にした構成となり、最低限の太さで構造を組み極力合理的な作りにしています。見た目は、なんともないものですが、分厚い迫力のある中空パネルを使った天板にまけない、軽快さを持った脚やシェルフの帆立など、空間にとけこみやすい形状になったと思います。
私たちは、よく「わけ」という言葉を使い、無印良品の商品には全てわけをつけて販売しています。
今回のシリーズも、製材時にできる端材を無駄なく使った天板に、流通している角パイプを使ってつくることで少しでも無駄をなくし安くお客様に届くようになっています。この考え方を内田洋行・パワープレイスと共有して、お互いに満足のいくものづくりがスタートできてよかったと思いました。
今後は、お互いの得意分野を活かし、オフィスだけでは留まらず、家庭にもふつうに溶け込んでいける国産材のプロダクトを加速させたいと思います。焼酎や日本酒はそのつくられた土地で飲むのが一番美味しいように、土地でうまれる木材をつかって、その土地の空気に合うものづくりをしていきたいと思います。そのためにも、今回関わったみなさまだけではなく、スギダラケのみなさまとも積極的に関わり熱いご教示を期待しています。
今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
   
 
 
打ち合わせの様子    
   
 
  完成したプロトタイプ
   
   
   
   
  ●<こやま・ゆうすけ> 株式会社 良品計画
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