今回このようなチャンスに恵まれとても有り難かったのですが、実は今まで木でデザインすることにあまり興味が無かったので(スギダラの皆さんスミマセン!)、とても難しく、勉強になるテーマでした。
最初に杉のスツールと聞いた時、角材の束に腰掛けるイメージが浮かびました。そして、それだけでは視覚的にも重量的にも重いので余分なところを削り落とそう、というコンセプトを考えたのです。杉の暖かさや力強さを残しつつモダンな空間にも合うように、という目論みだったのですが、はたして……。
座部の厚みや脚の細さなどは、原寸模型で全体的なバランスを確認しながら決めていきました。上から見下ろした時のパース感を補正するために(頭でっかちに見えるので)、微妙に裾広がりになるプロポーションにしたかったのですが、コストの問題で断念しています。
ディティールでこだわった点は、削り取った部分の面取りです。その面取りを他の部分よりもシャープにすることで、角材の束の面影を残しつつ削り取ったことを強調しています。
また、杉の家具にも色があった方が楽しいのではないかと思い、スリット状に見えてくるステンレスのジョイントパーツを塗装しました。
一番の問題点は、パーツ同士のジョイント方法でした。「角材が束になっている」ということのみが重要で、どんな方法でジョイントされているかは見えるべきではない、と考えたため、ボルト等は使いたくありませんでした。そこで、ダボや木材の別パーツを埋め込むことによる接着のみでできないかと若杉さんや千代田さんに相談したのですが、杉材の収縮などでうまくいかないだろうとのこと。しかし、結局ワガママを聞いていただき、ステンレスのジョイントパーツ、木ビス、ダボの併用でなんとか完成しました。
いざ完成してみると、意外に個性が強くて置かれる場所や合わせる家具を選ぶこと、こだわったはずの面取りの仕方が思ったほど効果的でなかったこと、やはりジョイントの強度が不安なことなど問題、課題が続出。そもそも原価10万!! いくらで売るんだッ!? これではデザイナーではないですね。形状的に杉パーツの加工が大変だったようです。ただ、材木屋さんのご好意で節の無いキレイな材を使っていただけましたし、プロポーション的にはほぼ思うようにできたので、そこは良かったと思っています。