特集 祝!グッドデザイン賞受賞
  想いが伝わるデザインを
文/写真 出水 進也
   
 
 
 

この軽トラ屋台の核となる部分は、一次産業で働いている人たちが必ず持っている軽トラを使って、消費者に直接販売できる魅力的な空間を作る、そんな屋台を提供して一次産業の幅を広げることです。大切なのはこの核をしっかりとデザインで表現することで、デザインしすぎる、というか小手先のデザインなどでは何だか気持ちが伝わらない、、、。簡単に言えばシンプルに、ということですが、そんなデザインの大切さを改めて感じたプロジェクトでした。

一昨年9月には、このプロジェクトを始めるきっかけともなった、宮崎県川南町で開催されている日本最大の軽トラ市「トロントロン軽トラ市」を見に行く機会もありました。いつもは閑散とした通りが、この軽トラ市が開催される日は打って変わって多くの人で溢れかえります。いわゆる6次産業の可能性を大きく感じるとともに、まだデザインが考えられていないこの分野がもっと魅力的になる可能性も同時に感じました。

   
 
  トロントロン軽トラ市
   
 
  もっと簡単に魅力的な空間が作れないか?
   
 

今回、この軽トラ屋台「K mobile」が、グッドデザイン賞ベスト100、さらには中小企業庁長官賞を受賞することができましたが、応募した当初はこんな結果は全く想像できていませんでした。それはこの軽トラ屋台に自信がなかったわけではなく、全国のオールジャンルの3000件以上のデザインが一同に介するグッドデザイン賞の中では、地味な存在になるのではないかと思ったからです。

でもそれは逆でした。軽トラ屋台が応募したユニットは、「個人用の移動機器・設備」という分類で、いわゆる自動車の類とそれに関連する機器など、メカニカルなデザインが集まるユニットだったので、軽トラ屋台のようにソフトにも関わる応募はほとんどなく、展示会場でも目立つ存在でした。とはいえ、ベスト100、中小企業長官賞という特別賞を与えられることになるとは、グッドデザイン賞がこれからのグッドデザインの指針を示すことになるので、想像だにしていませんでした。

   
 
  二次審査 展示風景。タイヤに囲まれる。
   
 
  ベスト100展 展示風景
   
 

客観的に見て、2014年度グッドデザイン賞ベスト100の中で、この軽トラ屋台はかなり異色の存在だと思っています。「ここまでグッドデザインの範囲ですよ」という試金石のような位置にいると、勝手ながら思っています。デザインに対する考え方が大きく変わってきていることを強く感じる今、一般の人たちもデザインというものの捉え方が変わってくる未来がそこまで来ていることを感じると同時に、自分もそのために頑張っていかなければと思っています。

   
 
  GULL(ガル)
   
 
  KYAKU/steel(キャク/スチール)
   
 
  KYAKU/wood(キャク/ウッド)
   
 
  KYAKU/table bench(キャク/テーブル ベンチ)
   
   
   
   
  ●<でみず・しんや> ナグモデザイン事務所
   
 
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