特集 矢作川流域支部結成!!
  妄想と共感の流域づくりが始まった
文•写真/丹羽健司
   
 
 
   
  その夜はひと騒動。ちょっとテンションの高い自己紹介に始まり、そのうち洲崎燈子がフラメンコを踊り、その横で若杉さんがカチャーシー?誰かが大学寮歌をがなり、ラテンが始まり、信濃の国の大合唱。そして、「♪ガーガーガーガー♪パタパタパタパタ♪プリンプリンプリンプリン♪アヒルのダンス、こんにちわ〜元気かなぁ〜楽しいね〜アヒルのダンス♪」を繰り返し、みんなヘロヘロ。能見奈津子が「もっと踊りたーい」「私の中のもひとりが踊りたいと叫んでいる」とわけのわからん駄々をこねる、「もうだめ〜」まわりの男どもはへたり込む。「じゃあ、腕相撲しよう」と今村が提案、南木が受けて立つ。そうして脈絡もなく腕相撲大会が始まる。そのあとはマグロになった酔いどれの死屍累々。2014年9月19日、こうして記念すべきスギダラ矢作川流域支部発足の夜は更けていった。
   
  そもそもこの支部発足は、根羽村の稲垣吾郎こと今村豊の妄想から始まった。50も半ばに差し掛かったアウトドア大好き暴走オヤジが矢作川デイズとか流域圏木づかいガイドラインを提案し、いずれはスギダラ・・・とか目をキラキラさせて話すのだ。素面でもそう、飲んだらもう止まらない、だれも止められない。やさしく「そうだよねぇ〜」とか相槌を打っているうちに、なんだかその気になって来る。ヤバイと思った時にはすでに手遅れ、ムンクの「叫び」状態になっている。
   
  支部発足の母体となる流域圏懇談会山部会の座長は東大生態水文学研究所の所長蔵治光一郎。その「緑のダム」で闘う研究者と今村が化学反応を起こす、さらにアブナイ!そして、洲崎燈子は、矢作川研究所の博士。ワインをこよなく愛する踊る研究者は今や流域の村づくりと飲み会にはなくてはならない存在だ。筆者丹羽健司は矢森協(矢作川水系森林ボランティア協議会)の代表。矢森協はスギダラと体臭が似ている。怪しくて危なくていい加減。そんな250人が嬉々としてチェーンソーをかついで流域の山に入っている。10年間やるぞと言って矢森協と蔵治、洲崎らで始めた「矢作川森の健康診断」が今年約束の10年を終えた。流域の3県7市町村610地点の人工林を2300人で踏査した。県や市町村の厚くて高い壁をひょいと越え、「流域は一つ、運命共同体」という至言を実感した。この運動はまたたく間に全国40都道府県に伝播した。森の健康診断は流域の森の仲間作りだった。次は、今村の妄想に付き合ってスギダラで木の仲間づくりだ。
   
 

   
   
  ●<にわ・けんじ> 矢作川水系森林ボランティア協議会代表
   
 
Copyright(C) 2005 GEKKAN SUGI all rights reserved