特集 Obisugi Design in New York
  木がるにはじめてみたらいい。
小さな一歩が想像もしていなかった未来を創るから。
文•写真/長友まさ美
   
 
 

人生は面白い。1年前に想像もしていなかったことが起きるのだから。
1年前の私が、こんなにもスギダラケな人生になると予想していただろうか。
いや、正直なところ、恥ずかしながら、地元の宮崎の飫肥杉さえも知らなかった。

   
 

そんな私を飫肥杉仲間に巻き込んでくれたのは、我らが飫肥杉世界展開チーム代表の齋藤潤一氏だ。 潤さんとは、人生で2回目にお会いしたときに、飫肥杉を世界に広めるためにクラウドファンディングに挑戦しようと準備していることを聴いた。

「へー。面白そうですねー」
「長友さん、広報やってくださいよー。美人広報!」
(美人広報という響きにひかれ)「やりたーい!」と応えたあの日。

まさか、あんな軽いのりで参画したプロジェクトが、こんなにもヘビーな道のりになるとは思わなかった。もちろん、飫肥杉仮面をつけることさえも。笑

   
 
  飫肥杉仮面をつけた筆者
   
 

ファーボ史上最高額の250万という目標金額。ぴたりと動きが止まったとき、なにもチームに貢献できていない気がして、責任を感じて、でも自分に何ができるのか分からず途方にくれた。
でも、このままのペースでは達成しないということだけははっきりしていた。

高額支援をつくって巻き返すしかない!と、30万のお返しプランを作ることにした。
私のもっているリソースで、なにが30万の価値あるものになるだろうか。

「研修しかない!」
杉に囲まれて研修をする。会議室で行う研修より、自然の中のほうが人の感情は開きやすい。
飫肥杉を知ってもらうこともできる。日南の魅力を感じてもらうこともできる。
それでいて、チーム力が上がるようなワークショップをやろう!

   
 
  実際に杉に囲まれてチーム力をあげる!研修プランを開催したときの1コマ。小国杉チームの皆さまと
   
 

そうと決まれば、あとは研修をしたいと思う企業を探すしかない。
前職で一緒に戦っていた仲間に電話をしてみた。
「正直、杉のことはよくわからん。でも、長友が熱くなってるってことは、きっといいものだろうから応援するよ。ちょうど長友に研修お願いしたいと思っていたところだから。」
二つ返事で、彼は電話を切った後、30万支援のバナーをクリックしてくれた。
(そんな彼も、今や、自宅のテーブルをオーダーメイドで作ろうとしている。飫肥杉で。)

ぐんと支援金がアップしてから、また数字が動き出してきた。
飫肥杉仮面ガールが中心となって開催した杉祭り、たじーを中心として声をかけまくった日南市役所、潤さんが苦手なメディア対応を地道にうけながら認知されてきたプロジェクト、なんどもライターさんが書き直した原稿、デザイナーさんが一目でプロジェクトを分かるように創ってくれたポスター。水面下で動いていた活動の種が、一斉に芽吹きだしてきた。

それからのまるで追い風が吹いたような支援の嵐に、何度も泣いた。嬉し涙、不安の涙、感激の涙。
そして、終了日前日に目標達成金額を超え、その後も残り10分前まで数字が伸び続けた。一人の夢がみんなの夢に変わった瞬間だった。
6月、研修プランに申し込んでくださった小国杉チームが飫肥に訪れたときには、杉が繋ぐご縁と奇跡を感じ、感動のあまり泣いた。

   
 
  小国杉チームの皆さまと崎田恭平日南市長を表敬訪問。小国杉ポーズで
   
 

他にも、飫肥杉世界展開チームで講演をさせていただいたご縁で繋がった西粟倉、そこから生まれた木工ようびさんとの新商品、飫肥杉を使った商品開発をこつこつと続けられてきていた日南のNPO法人ごんはるさん、江戸の本品堂とのコラボ商品、一緒にNYに商品を展示させて頂いた鹿沼。
NYの前に、東京で自分たちのことのように大喜びでお祝いをしてくださった若杉親分はじめ内田洋行のみなさま。

NYのイベントブースにたったとき、もうそこは飫肥杉という枠を越えた「日本の杉チーム」として立っていた。

   
 
  イベント4日間中は毎晩気絶するようにベッドに倒れ込んだ。ブースにたつと笑顔!
   
 

海外にいけば、「日本からきた!」と言うと、日南だろうと東京だろうと同じ日本。それは、地方であろうと関係なく世界で戦えるということ。もっというと、同じ想いをもった仲間が繋がり、さらに大きな挑戦をすることができるということ。

NYで、日本の職人さんの技術、デザイン性に高い評価を得て、世界で戦えるポテンシャルの高さを感じることができた。次なる課題も見つけることができた。
一歩踏み出したからこそ見える世界が、そこにはあった。
「Amazing!」「Cool!」「Beautifull!」と、目を輝かせながら見てくれる外国の方の表情を、一早く日本の職人さんたちに見て頂きたいと感じた。

   
 
  商品説明中の筆者と興味深そうに商品を見るお客様。商品を実際に手に取る方が多かった。
   
 
  人気の飫肥杉ぐいのみと。4日間大盛況!お客様がさらにお客様を連れてリピートしてくださるほど。
   
 

NYから帰ってきた今、私たちは、次なるチャレンジに向けてまた小さな一歩を歩み続けていく。杉が繋ぐ縁は、高千穂のスギダラ仙人、産直住宅の成功事例を持つ諸塚と、更なる広がりを見せている。
さて、次はどんなスギダラな人と出逢えるのだろう。
出逢いを一度で終わらせず、大事に丁寧に、想いと共に紡いでいきたい。

2015年の秋。いったい、私たちはどんな景色を見ているのだろうか。
きっと、今、想像もしていない世界を創れる気がするよ。

   
   
   
   
  ●<ながとも・まさみ>  宮崎てげてげ通信 代表、サンワード・ラボ株式会社 代表取締役 、飫肥杉世界展開チーム
   
 
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