隔月連載
  杉で仕掛ける/第52回 「土と木のデザイン」
文/ 海野洋光
   
 
 
 

どんな団体でも、得て不得手がある。杉ダラの強みは、会員数と多彩なイベントの多さ!
そして何よりは、一般市民を巻き込むことのできる楽しさだろう。
しかし、林業の方や木材業の方に杉ダラの腹の底から面白いイベントを見せ付けてもあまり、受けない。
まあ、一般の人が少しでも楽しんでいただければ・・・・。とも考えるのだが!!

   
 
 
     
 

なぜだろう?こんなに楽しいのに・・・。
ふっと思ったのは、紀伊国屋文左衛門。江戸時代の豪商だ。彼は、一代で財を成した。材木商だ。当時の材木商は、総合商社。茶碗から大八車、樽、桶など生活用品から土木、建築資材まで全てのものを取り揃えた。と言うより、全て木材で賄うことができた時代だ。木材なら、何でも売れる。つまり、大金持ちなのだ。遊び方も半端じゃない!!庶民が、喜ぶような小さなイベントは、面白くないだろう。木材屋さんは、その血を受け継いでいるに違いないと勝手に思っています。しかし、木材のイベントは面白い!!

   
 
 
     
 

江戸時代の話が出たついでに川村瑞賢という土木家、商売人のはなし。
芝の増上寺に額をつけなければならない工事がありました。その工事は、大きな重たい額を高いところにつける工事でした。当然、櫓を組んで足場を作って取り付ける工事なのですが、入札(一番安い金額の札を入れた業者が落札(受注)するシステム)になりました。川村瑞賢は、みんなの半値で入札してみごと落札しました。
みんなは、「無鉄砲なヤツだ」といってできるはずがないと確信したようですが、川村瑞賢は、周辺の米屋に1俵いくらで買い上げると言って相場より高い値段を提示しました。ただし、「米俵は芝の増上寺のここに持って来て積上げる」が条件だったそうです。
米屋さんは、それはありがたいと大八車に米俵を積んで続々と集まる。すると米俵がピラミッドになる。瑞賢は、「まあ帰らず、ちょっと見てろ!」とそれを足場にうまく額を取り付けました。
話はそれからだ。米屋に「今からこの米をふつうの値段で売却する」と言ったのでみんな喜んで買い取って帰った。
櫓を組むよりも米の差額の方が安かった。つまり、瑞賢は、儲けたのです。

   
 
   
 

さて、話の中に挿絵のように出ている写真は、宮崎東港の防風柵です。長さは、300m。高さ3mあります。150cm角4mが、300本。2×4材を横木は、1500本使いました。約40立方です。コンサルタントの濱本朋久さんと入念に構造の打ち合わせをしました。最大減風効果を発揮する素材の組合せと背後施設にどの程度の減風効果があるかを2次元流体解析しました。施工方法も自前で考えたのです。通常この手の防風柵は、鋼製なのです。それを敢えて木製が採用されたのです。しかも、価格は、鋼製の半分の価格で!!2007年のグッドデザイン賞を受賞しました。 

痛快でした。
それは、文字通り「土」と「木」を素材として組合せたデザインをやってのけたからなのです。

   
   
   
   
  ●<うみの・ひろみつ>木材コンシェルジュ
ほぼ、毎日更新しています。ブログ「海杉 木材コンシェルジュ」 http://blog.goo.ne.jp/umisugi/
2009年3月31日をもって、日向木の芽会 を卒業しました。
海野建設株式会社 代表取締役 / HN :海杉
月刊杉web単行本『杉で仕掛ける』:http://www.m-sugi.com/books/books_umi.htm
月刊杉web単行本『杉で仕掛ける2』:http://www.m-sugi.com/books/books_umi2.htm
   
 
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