短期連載
  佐渡の話2 〜笹川十八枚村物語〜 /第8話 「カカシてはならない案山子」
文/写真 崎谷浩一郎
   
 
 
   2013年3月20日、春分の日。笹デ会のメンバーが集落センターに集まった。あいにく空は小雨模様だが、いよいよ案山子型解説サイン(通称:たもっちゃん)の板面を設置するのである。予め設置された12基のサイン本体に、地元佐渡の工務店の金子建築に手配、加工をしてもらった越後杉の解説板と丸い番号板を皆で取り付けていく。心配していた本体と板面の取り合いも問題ない。
   
 
 
板面を設置する前のサイン本体   手際良く阿吽の呼吸で取り付ける笹川の皆さん
   
   解説板はメンテナンスのことを考えて、板自体には直接ビスを留めつけずに金物で板を挟み込んでサイン本体に固定することができるようになっている。板を痛めることなく、着けたり外したりできる。冬季には住民の方々が解説板を取り外し、雪が解けて春がきたらまた皆で板を取り付ける、という仕組みである。丸い番号板は笠があるのでつけっぱなし、裏から3箇所のビス止めする。現場でスムーズにいくように、事前に位置出しをしてキリで下穴を開けておいた。
   
 
  記念すべき1基目!
   
   段取りを確認すると、早速取り付け作業に取り掛かる。こういう時の笹川集落の方々のコンビネーションは抜群である。あっという間にひとつめの板面が取り付けられた。嬉しくて、皆で自然と記念写真を撮る。何だか親戚の集まりみたいだ。『この記念写真って全部の場所で取っていくの〜?笑』冗談を言いながら、ひとつひとつ、板面を取りつけながら、12箇所のサインのところを皆で歩いて回っていく。
   
 
 
ちゃんと持ってて〜笑   南雲さんも
   
 
 
みんなで   ひたすら取り付ける
   
 
  笹川の女性は良く笑う
   
   不思議な光景だった。笹川の風景と笹川の人々、そしてそこに立てられたサイン。当たり前だが、サインが立つところは、いずれも笹川集落の成り立ちを語るのに欠かすことのできない場所ばかりである。サインの姿や形は同じはずなのに、12基の、いや12人の案山子はそれぞれの場所で全て表情が異なっていて、いかにも愛おしい。案山子サインは、その場所に、今回新たに立ったはずなのに、あたかも以前からずっとそこに居たかのようでもあった。現場で、誰かが言った。
   
  『何だか笹川の人口が急に増えたみたいだなあ!』
   
 
  笹川のシンボル虎丸山と
  (つづく)
   
   
   
   
  ●<さきたに・こういちろう>
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