特集2 第三回吉野貯木まちあるき&貯木本発行
  吉野貯木まちあるきに何を想う。メイン会場を振り返って
文/写真 桝谷紀恵
 
 
 

 わたしたちが働いている吉野林業地帯一帯は、近代〜現代にかけての産業遺産だと思う。中でも今回まちあるきの舞台となった貯木は当時の遺構を残す水門をはじめとして、文化的な風景がかしこに見られる。風景だけではない、リフトが走り回ったり製材機が動いたり、工場から出る音、製材したての木の香りやその土地の匂い、木の手ざわり、山の里の味が楽しめる喜び……、今回の貯木まちあるきに来ていただく方には、五感で貯木を感じてもらいたい、という想いがあった。
 五感で楽しめれば、きっと記憶に残る良い一日になるだろうと思ったから。

   
 

 前回、前々回といつも課題になっていたのは、集まる「場」のことだった。フォーラムや発表会をする、「場」ではなく、例えば“食”を囲んで、楽しそうに人が集まってゆるゆる、木のことを語れる場、出会える「場」が欲しい。

   
 
 
メイン会場となった 福田さんの木材倉庫    
   
 

今回のメイン会場となる、福田製材所さんの倉庫と出会ったのは、そんなときだった。昨年第2回の貯木まちあるき、貯木内をかつて走っていた引き込み線を巡るツアーをしていたとき。
 木材倉庫は静かにたたずんでいるが、これまでの貯木の歴史をひっそりと物語っているようだった。野口編集長と、「菊ちゃんー。いつかここで青空市みたいなこと、したいなー」「あーええですねー。できませんかねー」
 たぶん、このやりとりが、福田さんの木材倉庫が、今回の貯木まちあるきのメイン会場の候補にあがるきっかけだったように思う。

   
 

 福田さんは、杉をメインに挽いてはる製材所。まちあるきの構想が広がるなかで、会議にも福田さんは足を運んでくれた。「なんでも言いよー」。この一言が、嬉しかった。
 いよいよまちあるき前日、会場の設営。といっても本当に杉板を並べただけだ。
「イス、足りてるかー?おっちゃん自信の作や!使い〜」。そう言って近所の製材所さんがとリフトいっぱいに杉で作られた椅子を持ってきてくれた。ここでも貯木のおっちゃんの優しさにほっこりする。

   
 
  木材倉庫をバックに。地元の食材販売やワークショップのブース出店
   
 
 
近所のイヌイ木工さん作の椅子も運び込まれた   吉野町地域おこし協力隊の方による吉野Cafe
   
 
 
街視点での木の良さを伝えてくれた   木の鉋くずや面皮を使ったワークショップ
   
 
 
木の火鉢を使ったフォンデュも用意された   針金を使ったワークショップ
   
 
 
山の幸、トチ餅を屋台で販売   復刻版 やままちの屋台
   
 

当日は、吉野の山奥から、はたまた街から、まちあるきを盛り上げるべく多くの方が出店してくださった。林業だけの分野でない、農業といった他業種の連携もこれからきっと求められるはずだ。

 まちあるき中は会場の運営をしつながらではあるが、来てくれた人とずっとおしゃべりしていた。あっちこっちで「杉談義」のおしゃべりが聞こえてくる。外から来た方だけでなく、中にはご近所の製材所の奥さんの姿も。内の人が、貯木を改めて見つめ返す、良いきっかけになれば、そんな想いもした。

   
 
 
木匠塾による即興屋台も完成した、右は宮崎から軽トラ屋台を運んできてくださった海野さん   地元の方の手作り、竹の皮で包まれた山の幸いっぱいのお弁当
   
 

貯木を想うとき、いつもあの独特な雰囲気と工場の「音」や「匂い」を思い出す。
まちあるきは終わってしまったが、なんでもない日にひょこっとまた来てほしい。
通常営業、何気ない貯木の中には、きっと、まだまだ素敵な場所があるはずだから。

   
   
   
   
  ●<ますたに・のりえ>潟Eッドベース勤務 
源流塾・事務局担当 http://genryujuku.web.fc2.com/
川上村を拠点に、源流学(自然とともに生きる力)を学んでいます。山の名人、辻谷さんを師匠に楽しく活動中です!
   
 
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