連載

 
スギダラな人びと探訪/第9回
文/写真 千代田健一

杉を愛してやまない人びとを、日本各地に訪ねます。どんな杉好きが待ち受けているでしょう。

 


今回は会員番号200番、建築家の武田光史(たけだこうじ)さんを訪ねました。と言うか、武田さんから頼まれたスギダラファニチャーの納品なんですけどね。武田さんとは宮崎県木材青壮年会連合会主催の「杉コレクション2005」の二次審査の時にたまたまご一緒して、そのまま一次審査も引き受けてい
ただいたというご縁があります。その時初めてお会いして、即入会していただきました。で、これは本当に偶然なのですが、丁度会員番号200番のキリ番を狙うことなくゲットされました。まあ、そうでなくとも名誉会員枠で200番を差し上げたと思いますが……。
読者の皆さんであれば当然ご存知かとは思いますが、武田さんには本誌にて執筆もお願いしている宮崎県出身の建築家で、日本工業大学で建築学科の教授をされています。月刊杉WEB版では5号7号で執筆していただきました。

今回、武田さんからの依頼は、武田さん設計の個人邸宅用のソファとテーブルでした。昨年末にウチダラ洋行のスギダラオフィスでスギダラファニチャーをご覧になって、これで行こう!と思い立ってくれたそうです。まあ、あまりお金もかけられないとの事だったので、スギダラ本部メンバーと武田さんの学校の学生で組立て施工をすることを前提でお引受けしました。さすが建築家だけあって、武田さんからはちゃんとスケッチが送られてきました。


それらの家具の設計はいつものように本部デザイン部長の若杉さんと本部スギダラファニチャー設計担当の中尾さんが担当しました。普段は作り勝手や納まりのことを考え、家具デザインの専門家として多少手を入れたりするのですが、今回は武田さん自らスギダラファニチャーをデザインしていただいたので、できるだけイメージ通りに作ることを心掛けて製作にあたりました。

で、当然ながらどこの杉材を使うか決めねばなりません。武田さんは宮崎出身なので、宮崎産材という手もあったのですが、今回は現場から一番近い産地である埼玉県の西川杉を使うことにしました。
早速フォレスト西川の浅見さんに連絡を取りました。浅見さんには本誌2号で西川材の記事を執筆していただいてますから、ご存知ですね?

納期的にも問題無いとのことだったので、早速発注して製作の段取りを始めました。施工に当たったのはわたくし、チヨダラと中尾さん、それと会員ではないのですが、工事の現場が大好きなウチダラ洋行の石橋さん(NH:親方)。そして武田事務所のスタッフの方にも手伝っていただきました。

フォレスト西川さんにお願いした杉材は浅見さんご本人が持ってきてくれました。こういうところがスギダラっぽくていいですよね。材料は節もバッチリある1等材ですが、色も風合いも揃ってていい感じです。


材自体はちゃんとプレーナー加工(機械によるかんな掛け)がしてあり、そのままでも充分綺麗なのですが、家具として使うので、稜線の部分を面取りしたり、表面がすべすべになるようにサンダー掛けもやりました。ソファの方の杉部分はほとんど加工なしで行けそうで現場での組立ても問題無いのですが、テーブルの脚部はさすがに現場では困難と判断し、事前にその分の材料を送ってもらい、中尾さんが加工に当たったのですが、結構苦労していたようです。

 

これが仕上がったスギダラリビングセットです。ソファの方は幅3.9mの長さがあり、天井の高いリビング空間に負けず、いいボリューム感を出しています。ソファとしてのクッション部なしでも面白いんじゃないかと思いました。

それに比べるとテーブルの方がちょっとこぢんまりし杉ちゃったかもしれません。これは大きさの問題だけではなく苦心して作った脚部によるテーブルの高さに起因するところが大きいようです。武田さんもそう思ったのか、現場にて「脚を切って短くはできないだろうか?」というご要望をいただいたのですが、さすがに現場で4本の脚をきれいに高さを揃えて切断するのは困難なので、この場はこのまま納めさせていただくことにしました。

今回、武田さんが設計された住宅ではいろんなところでコストを抑えるアイデアが盛り込まれていました。壁面の仕上げがシナベニアの合板だったり、建具の枠も合板の断面がモロに露出するようなデザインになっています。材料だけを見ると安っぽい感じがしなくもないのですが、階段のスチール部やアルミのサッシ枠など他の素材とのマッチングも良く天井の高い構造的なダイナミックさとあいまって、素敵な雰囲気を醸し出しています。その中で今回のスギダラファニチャーもうまく馴染んでくれたようです。クライアントの元木さんにも大変喜んでいただきました。

  今回は、武田さんがデザインし、スギダラ本部&ウチダラ洋行で設計と製作、浅見さんが材料をという連携でできあがりました。こういった会員同士のネットワークを足ががりとしたものづくり、スギダラ普及活動が各地で進むといいですよね。
設計者やデザイナーの方々、杉材の製材・加工業に携わる方々だけでなく、杉材以外、例えば金物を製作してくれる加工屋さん、今回のようなソファのクッション部を作ってくれる家具屋さん等、多方面にネットワークを拡大してゆきたいと思っておりますので、会員の皆様、引き続き勧誘活動ヨロスギお願いいたします。

さて、今回はおまけがありまして、「スギダラな人々探訪」では無く、「スギダラな人々から訪問を受けた記」であります。
3月9日には秋田支部長「すぎっち」こと菅原さんがスギダラ仮本部のあるウチダラ洋行を訪問してくれました。出張のついでに寄ってくれたのか、本部に行くついでに出張を無理やり作ったのか不明ですが、夕方から夜までじっくりお付き合いいただきました。その時におみやげで持ってきてくれたのが、その名も「わか杉」という名のお菓子で、当の若杉さんも大喜びしておりました。
スギダラオフィスをご案内した後に、すぎっちさんの名にちなんで作った「ぶんぶくすぎっちん」にもご対面いただきました。話で盛り上がっちゃって、記念撮影も忘れてしまって写真は無いのですが、本部訪問のレポートを秋田支部のブログ「北のスギダラ」にアップされていますので参照ください。

その後、菅原さんはこの秋田支部ログに本腰を入れ、支部独自の活動を本格的にやっていくことになるのですが、いやー、すごい勢いです。ブログの更新はすごくこまめだし、一気に18名分の会員登録まとめてきたりで、今や管轄メンバー約30名、広報宣伝部長(会員No.279のモクネット小林さん)も手に入れて磐石の体制です。この一気入会のおかげで我がスギダラ一派も300の大台に乗りました。秋田支部管轄の皆さんだけでなく、全国の会員の皆様も「北のスギダラ」を盛り立ててやってください。

菅原さんの訪問の直後11日の土曜には、滋賀の会員さん、澤田さん(会員No.253 HN:サワダラ)が本部を訪問してくれました。澤田さんは滋賀で木を活かした家づくりをされている工務店の方で滋賀木青会に所属されています。今回は、全国の木青会の会議で東京にいらしたとの事。せっかく東京に行くので、東京のスギダラサイトを紹介して欲しい旨、連絡がありました。やはり東京と言えば、スギダラ本部のスギダラオフィスだろう! それと丁度その頃施工中だったウチダラオフィスも見せられるかも!と思いお誘いしました。

 

社員の方が手作りで作った杉の掛け時計をお土産に持ってきてくれたのですが、何とその時計を入れる箱まで杉の板で自ら作ってお持ちいただきました。それも本部用とウチダラオフィス用と……。早速、それぞれに飾らせていただいております。

     
 


澤田さんがご兄弟で営まれる株式会社マルトのHPは→http://www.maruto-s.com/

その中の施工例のページのS.T邸がご自身のスギダラホームです。
ホント、スギダラケの大きな家で羨ましい限りですが、国産それも地元の杉材を良さをアピールするために自邸でも自らいろんな使い方を試されています。

澤田さんはチェーンソーアートの方にも人脈があって、5月27日、28日に 愛知県北設楽郡東栄町で行われる世界チェンソーアート競技大会IN東栄2006のお話をいただきました。チェーンソーアートを競技として広めてゆくだけでなく、材料である杉についてもより突っ込んで関わってゆこうとの事で、スギダラ倶楽部の方でも応援して欲しいとの事でした。
これについては何かしら協力ができたらと考えていますので、改めて会員の皆様にはお知らせしたいと思います。もちろん、吉野の出来杉さんこと梶谷さんもその大会に出場されるそうです! スギダラで何か協力できるかどうかはともかく、梶谷さんの応援には駆けつけたいですね。

吉野(関西)支部にも元気なメンバーが入ってくれましたので活動に拍車をかけて行きましょう!

頑張るぞー!!! おーーー!

まあ、それにしても最近はこっちから訪問するまでも無く、逆にスギダラな人々
が訪ねて来てくれます。すぎっちさんが来てくれた時には、南雲さんが東大のシンポジウムで知り合った村田さん(会員No.275で宮崎の崎田さんの同級生)も合流してくれたり、つい先日は宮崎県東京事務所の二見さんが来てくれたり、今日(3月29日)は宮崎木青会の川上さんが来てくれたりで……。
とても一度にレポートできないので、今ちょっと冬眠状態の「スギダラ家の人々」のブログの方にその辺アップして行きたいと思います。(ち)

 
 

 
  ●<ちよだ・けんいち>インハウス・プロダクトデザイナー
株式会社内田洋行 テクニカルデザインセンター所属。 日本全国スギダラケ倶楽部 本部広報宣伝部長
 
 
 

 


 
   
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