連載

 
吉野杉をハラオシしよう!〜“駆け出し”専務の修行日記〜
文/写真 石橋 輝一
鍛え系杉連載。さぁ、吉野中央3代目と一緒に勉強だ!
 

 

 


 はじめまして。こちらは奈良県吉野町。皆様ご存知の通り、吉野は日本三大美林に数えられる「吉野杉」の産地です。この地に製材所を構えて70年。その名は「吉野中央木材」。吉野林業発祥の地である川上村から吉野川を下り、少し開けた辺りに貯木地と呼ばれる木材団地が70年前に造成され(東京の新木場みたいな感じです)、そこに製材所を開いたのが始まりだそうです。

 私、石橋輝一は吉野中央木材3代目として、現在修行中の身であります。とりあえず肩書きは“専務”。ですが、会社では一番“下っ端”。昨年11月にこの地に戻り、はや3ヶ月。恥ずかしながら、いまだ右も左もわかりません。これから1年かけて皆様と共に「吉野杉」を学び、成長できれば……と願っております。

 どうぞ宜しくお願い致します。

 それではまず、私の自己紹介から。

 1978年生まれの27歳。折り紙つきの健康優良児(よく食べ、よく飲み、よく寝ます)。高校までは奈良県にて過ごし、大学で北の大地へ。札幌で大学生活を満喫した後、大阪に戻り建設業のサラリーマンとして働きました。3年後退職。実家に戻るかと思いきや、なぜか上京。東京でテレビ番組制作会社のADとして1年半働き、やっと実家に戻った次第であります。

 

私が石橋輝一。吉野杉をバックに、3代目の雄姿(?)。


 子供の頃から、自宅の隣が製材工場という恵まれた(?)環境に置かれ、吉野杉、吉野桧に囲まれて育ってきましたが、木のことはさっぱり分からず、さらに4年半の社会人生活でも全く場違いな業界に身を置いたため、ただいま四苦八苦している状況です。(当社は杉だけでなく、桧も取り扱っておりますが、仕事を始めた当初は製品の柱を見ても杉と桧の違いが分からない程でしたから……。でも2ヶ月経った今では、もちろん違いは分かります!)

 この連載では、吉野中央木材の杉の責任者、上北一良部長に指導を仰ぎつつ「吉野杉」の製材工場のディープなお話を綴ってまいります。上北部長は杉歴30年の大ベテラン。吉野杉の酸いも甘いも全て経験されております。

右が上北部長。吉野杉一筋30年。風格があります。
左が私、石橋輝一。身長189センチ。結構巨人です。


 吉野杉は「銘木」として高い評価を受け、高級住宅建材として確固たる地位を確立しました。ここ吉野の気候風土、代々受け継がれ長き時を経て洗練されて来た造林技術、製材技術。その結晶が吉野杉の名声を築きました。しかし、悲しい事に銘木として珍重された吉野杉も、建築コストの減少、外材・集成材の攻勢、一戸建て木造住宅やマンションの和室の減少…、などなどの要因が重なり、今や危機的な状況に陥っております。

 でも、暗いことばかりも言ってられません! この業界に入って2ヶ月なのに、頭からお先真っ暗な考えでは寂しいじゃありませんか。自然素材の家の流行や、国産材を使った家づくり運動……など再評価の機運も見られ、今こそ吉野杉、吉野林業の素晴らしさを知って頂きたいと思います。

 今月は自己紹介だけで終わってしまいましたが、来月からは製材工場の知られざる一面を次々とご紹介したいと考えております。私にとってもすべてが未知の世界ですので、学んだ事から順番にお伝えするスタイルになると思います。来月には私達が持っている山からの出材が予定されていますので、その模様をご報告できれば……、さらに製材工場案内、年季の入った機械たち、熟練の職人芸など企画盛りだくさんでいきたいと思いますので何卒宜しくお願い致します。

つづく

こちらが吉野中央木材の製材工場と事務所です。
工場見学はいつでも大歓迎ですので、どうぞお越し下さい。。

 
 
●<いしばし・てるいち> 吉野杉・吉野桧の製造加工販売「吉野中央木材」3代目(いちおう専務)。
杉歴ただいま2ヶ月の駆け出し。杉マスターを目指し修行中。
吉野中央木材ホームページ http://www.homarewood.co.jp
 
 

   
   
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